インドシナニュース

中国に続く生産国は?(後)

(前編より)

 

テキサス工科大学Free Market InstituteのBenjamin Powell所長は、仕事を探している者が自ら工場での低賃金労働を選ぶようなことがあれば、それはひどい選択肢のなかでもまだましなものを選んだに過ぎないのだと言う。「こうした国々に対して法律を課し、賃金の引き上げや労働条件の改善を義務付けることができたとしても、動機を持ってやって来た企業らはいずれ撤退するだろう。であれば、貧困のまま放置しておいた方が良いのでは」との見解を示した。

輸出の8~9割をアパレル製品が占めるハイチでは、労働基準に進歩の兆しがみえている。

「Better Work(衣料産業の発展を目指す国際労働機関(ILO)の提携プログラム)」で調査方針責任者を務めるArianna Rossi氏によれば、ハイチの労働条件はこれまでにも大幅に改善されてきたという。最低賃金は今年5月、1日あたり5ドルへと引き上げられた。Better Workの最新レポートでは、工場らはこの引き上げ令に対してほぼ全面的に従い、約37%の工場が少なくとも6.75ドルの日給を支払っていると伝えられた。

世間では衣料品の製造が雇用を生み出すとされているが、実際のところ、それを証明したものはこれまでのところ存在していない。稼働から2年が経ったハイチ北部の工業団地Caracolでは、米政府が1億2400万ドルという多額の出資をしたにも関わらず、当初計画されていた6万の雇用を大幅に下回る、わずか3000の雇用しか創出できなかった。さらに同工業団地の開発には米国務省、ヒラリー・クリントン前国務長官およびビル・クリントン元大統領による熱心な推進活動があったほか、ハイチから米国への輸入には、HOPE IIの貿易協定による無税特別措置または特恵関税も適用されていた。

Rossi氏は、Better Workによる研究プロジェクトを概念実証として引用し、企業らは今なお「労働者を優遇すればビジネスも成功する」ということに気付いている段階なのだと説明した。

だがNova氏のような専門家は、そう簡単には納得しない。一例として挙げれば、衣料産業に従事することで貧困から脱出できるのであれば、過去10年にわたり世界中で賃金が減少するようなことはなかったはずだとし、衣料産業の賃金は平均して「生活賃金」の約3分の1だと述べた。

衣料産業への従事が国家や個人の経済発展にとって有益であろうとなかろうと、ハイチやミャンマー、エチオピアといった国々はこの先、数々のブランド企業を盛大に受け入れることだろう。だがこれらブランド企業が今後、良心の呵責を感じるかどうかはまだ分からない。

 

 

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最終更新:2014年11月07日14:00

中国に続く生産国は?(前)

中国にとって衣料品製造はもはや「過去のもの」らしい。

「世界の工場」と呼ばれる中国では労働コストが高騰し続け、そのためこれまで中国を生産拠点としてきた有名ブランド企業らは、別の委託先国を探し始めた。既に生産拠点としてその地位を確立したバングラデシュやベトナムに加え、アパレル産業の国際競争には、新たなライバルが出現している。なかでもミャンマー、ハイチ、エチオピアなどは、貿易で繁栄したかつての状態を取り戻そうとしたり、さらに言えば完全にゼロの状態から何かを立ち上げようとしたりしている。

開発専門家らは、中国の製造業が今後数年の間に約8500万もの雇用を喪失するとみており、途上国が、かつての韓国のように急速な経済発展を遂げるには、またとないチャンスになるだろうと考えている。

一般的な発展の流れは次の通りだ。まず特別な技術を必要としない基本レベルの衣料品製造(Tシャツなど)から始め、徐々にレベルを上げる。その後より高い技術を要する製品(スーツなど)を手がけ、最終的には高度な技術が求められる電化製品などを製造するようになる。産業が成長すれば生活の質も必然的に向上し、消費者階級にも変化がもたらされる。その結果、自然で持続的な成長が促されるのである。

そして現在の中国のように、衣料品の縫製を「教養のいらない作業」とみなすようになる。社会政策の研究を行う「アメリカン・エンタープライズ研究所」研究員のDerek Scissors博士は、こうした発展の流れを「繊維でタンクを作る者はいない(国の発展には順序がある)」と表現した。

だが中国の後を追う国々が、実際にこの「繊維からタンクへ」のモデルに倣えるかどうかは重大な論点である。今後生産拠点となる国が生き残る唯一の方法は、低コストを全面に押し出すことだと主張する者もいる。だがそこには、生活もままならないほどの低賃金や、ないも同然のわずかな権利といった労働問題が付随する。労働コストが安価ならどこへでも流れていく気ままなブランド企業らが、衣料産業に対して、高度な技術を持つ労働者を供給し、インフラを整備し、かつ効力のある法律を教示するなどとうていあり得ない話だろう。

間違った慣習ほど受け継がれやすい。そう考えると、持続的な産業という点で最も可能性のある国は、労働上の悪習が基本的に存在しないエチオピアなのかもしれない。エチオピアは、インフラ整備の遅れという欠点はあるが、現在急成長を遂げている10種類の産業のうち6種類の産業で大陸市場への進出を図っており、これに世界最大とも言える畜産部門(レザー)を合わせると、「30年前の中国」とも言える状態を魅力的な長期投資の対象に作り変える可能性がある。少なくとも中国とトルコはそう考えているようだ。

一方、世界の2大アパレル・メーカー、Huajian Shoes社およびAkya Teksti社では、50の企業が入居し6万人の労働者が働く、数十億ドル規模の「アパレル都市」の開発を計画している。

スウェーデン衣料小売り大手のH&Mもまたエチオピアの将来性に賭け、昨年生産拠点の一部を同国に移転した。また政府系投資ファンドのSwedfundと提携し、持続的成長を目指す3件の新工場を「責任」を持って管理・運営している。

このように新たに経済発展を遂げる国のために倫理的な基盤を作ろうとする動きは、今年6月ミャンマーでのGapの動きにもみられた。残虐な軍事政権のためにかつて「独裁国家」と呼ばれたミャンマーでは2011年、大規模な民主改革が実施された。その1年後、欧米諸国による経済制裁が一部解除された。ミャンマーの衣料産業は今や好調で、2012年に9億ドルだった輸出高が今年は17億ドルにまで達している。

こうした企業らの行動は誠実なものと考えられている。Gapは、米国国際開発庁(USAID)やミャンマーのNGO団体と連携し、衣料産業に対する「略奪と解放」といった概念を払拭しようと努力している。これについて同社政府広報課のDebbie Mesloh課長は「国の重要な時期に力を貸したい」のだと説明し、労働者の立場に立った労働条件の設定を優先事項とするほか、政府との連携で最良の労働慣行が取られるよう監督機関を設置すると述べた。

だがこれを「馬鹿げた行動」と呼ぶ者もいる。労働者権利コンソーシアム(WRC)のScott Nova事務局長もその1人だ。Nova氏は「世界にはまだまだ、企業の社会的責任としてやるべきことがたくさんある」と述べ、「1ブランド企業が1国の問題に介入し、世界をより良いものにしようなどという考えはおこがましい。彼らの行動の裏には、やはり『労働コストの低さを利用したい』という思いがあるはずだ」と持論を展開した。

だが実際のところ、ミャンマーの製造者協会によれば、労働者の月給はわずか30ドルほどで、世界銀行が貧困の指標とする日給1.25ドルをさらに下回る額となっている。

先ごろ公表されたいくつかの報告書では、エチオピアの縫製労働者の月給は37~53ドルと伝えられており、世界で最も賃金の低い国2カ国のうちの1カ国として数えられていた(バングラデシュでは月給約68ドル)。

こうしたデータを重要視する者はほとんどいない。だが、中には低賃金について議論する専門家も存在する。すでに経済発展を遂げている国においてかつての特徴として挙げられるのは、投資家を呼び込むには、初期の段階で犠牲を払わなければならないということだ。近年では台湾、韓国、香港などがこれに相当する。

 

(後編に続く)

 

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最終更新:2014年11月07日06:00

ギャップ、米小売業初のミャンマー市場参入

米アパレル大手のギャップが、ミャンマーで衣料品を生産することが明らかになった。同社は、2011年より行われているミャンマーの民主改革以降、米小売業としては初のアパレル市場参入となる。

米大使館が7日に行った発表によると、同社は、商業都市ヤンゴンの工場2棟で、傘下の「オールド・ネイビー」と「バナナ・リパブリック」の上着の生産を行うという。生産された製品は、今夏から本国アメリカで販売される予定。

これまで、ミャンマーで強い影響力を示してきたのはアジア各国だった。だが、半世紀にわたる軍事政権下で課された経済制裁が緩和されたことにより、ここ数年で、欧米諸国の企業も再進出を図るようになっている。

電力の供給や道路の整備など、ミャンマーには数多くの課題が残されている。しかし同国の安価で豊富な労働力は、技能レベルは低いが、特に小売業界にとって魅力的なものとなるだろう。

同社副社長のWilma Wallace氏は、米大使が参加した式典で、「これは、ミャンマーにとって歴史的な瞬間。わが社がミャンマーに参入することによって、この国の経済や社会の成長を促すことができれば」と述べた。また「労働条件の改善や世界各国の衣料品工場での地域力の育成など、これまでの実績を活かしたい」と続けた。

同社がミャンマー・タイムズ紙に伝えたところによると、ミャンマーでは韓国企業の所有する工場で、「オールド・ネイビー」と「バナナ・リパブリック」のベストやジャケットの生産を行うという。

投資額は明らかにしていないが、2棟の工場のうち1棟では従業員を700人増員することに同意し、その結果、各工場における従業員数はそれぞれ合計で約2000人になるという。

同社は、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)およびケア・インターナショナルと連携し、さらに「P.A.C.E. プログラム(同社が開発・推進する人材育成とキャリア向上を目指した教育プログラム)」を利用して、女性従業員への技術教育や技能訓練などの活動に乗り出す。

 

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最終更新:2014年06月12日11:03

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