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カンボジア:Walmart、Nike他、縫製産業の月額40ドルの賃金引き上げ支持を否定(後)

(前編より)

 

しかし経済的利益が何よりも優先されることとなるだろう、とビジネスと人権を扱うNYU Stern センターのシニアアドバイザーで、公正労働協会の元会長であるAuret van Heerden氏は述べた。

請負工場の経営者は賃上げに消極的である。なぜなら彼らのバイヤーが増加した労働コスト分を吸収し、値上げしてくれる保証がないためである。さらに、多くの縫製工場は一般的に短期契約の元で運営されており、わずか数ヶ月分しか契約を結んでいないため、工場経営者が一方的に賃上げして契約単価を上げることを要求すれば、将来のビジネスを失うリスクが生じる。バイヤーはカンボジアの他の工場に購買先を切り替えるか、バングラデシュやミャンマーなど、海外の安価な労働力を求めるようになるかもしれない。

「多くの請負工場経営者は個人的にはバイヤーやブランドについて、調達価格を切り下げる一方で、より多くの労働コストを請負工場側が吸収することを求めているとし、問題の一端を担うものとして彼らを非難しています。」とvan Heerden氏は述べた。

もちろんブランド側がより高い賃金支払いを保証するために長期契約を結べばよいのであるが、実際はそうはしない。そして現時点で彼らは、カンボジアにおけるビジネスや政治的パートナーを失望させるのを恐れ、最低賃金の議論に巻き込まれたくないと考えている、とvan Heerden氏は解説した。

「もしブランドが賃上げ交渉に介入すれば、政府や業界団体の反感を買ってしまうでしょう。また自社の調達先である工場経営者も敵に回してしまうことになります。」とvan Heerden氏は述べた。「ブランドは、政府、業界団体、工場経営者の3者のつま先を踏みつけることになることを恐れ、よほどの場合を除いて労働組合に評価されたいとは考えないでしょう。私は彼らがその議論に巻き込まれたくない理由を容易に理解することができます。」

Rhode Island大学の歴史学教授であり、会社のアウトソーシングに関する悲劇的結末を綴った長編ストーリー「Out of Sight」の作者であるErik Loomis氏は、ブランドは容易に賃上げを吸収することができる、と考えている。

米証券取引委員会(SEC)に提出された企業の最新業績によると、財務の健全性と多額の利益が示されている。また近年、いくつかの小売業者はいわゆる自社株買戻しに躊躇なく何十億米ドルもの資金を投入し、自社株の価値を増加させ、株主の利益を膨らませるために巨額の投資を行っていることが分かる。昨年Walmartは、自社株買戻しで200億米ドルを投じることを承認した。Nikeは直近4年間で80億米ドルの自社株買戻しを盛んに実施した。Gap Inc.は2月に比較的控えめに10億米ドルの自社株買い計画を公表した。

「最低賃金に月額40米ドルを追加することはこれらの大企業にとって本当にささいなことです。」とLoomis氏は述べた。「もう一度考え直してみましょう。それは月額40米ドルで、1日当たりでも1週当たりでもありません。私たちは、一人の労働者1日当り、たった数ドルの議論をしているのです。」

 

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最終更新:2016年09月28日12:08

カンボジア:Walmart、Nike他、縫製産業の月額40ドルの賃金引き上げ支持を否定(前)

独裁主義的な法規制で、世界でも最悪の労働環境の国の一つとされるカンボジアから衣料品を調達している大手の欧米系小売業者は、衣料品産業の最低賃金を月額約40米ドルへ賃上げする提案について支持しないことを表明した。

東南アジアの近隣諸国同様、カンボジアはアメリカや欧州のブランドにとって繊維製品や履物生産の主要な委託先である。カンボジアは市場へのアクセスが容易で、何よりも安い労働力を提供している。そうした背景により、Walmart やNikeなどトップ企業からの委託契約に牽引され、衣料品・履物輸出は過去10年間で2倍以上増加している。

しかしアパレル業界は順風満帆なわけではない。近年この業界で圧倒的に多数を占める女性労働者がより高い賃金を求めてマス・ストライキや抗議活動を繰り広げ、何人かの労働者が2014年1月の警察の取り締まりで殺害される事件も起きた。そして今、更なる緊張が高まっている。

今月数十万人の縫製労働者を代表する労働組合は、現状月額140米ドルのアパレル業界最低賃金水準を179.6米ドルまで引き上げることを提案したが、彼女らは工場経営者のロビー団体であるカンボジア縫製業協会(GMAC)からの強い反対に会い、月額144.20米ドルのカウンターオファーを示された。多くの欧米ブランドもまた、組合の提案に対して支持しないことを表明した。

In These Times誌はカンボジアに委託契約を持つ欧米系の大手ブランドのうち、Walmart、Nike、Adidas、Levi Strauss & Co.、H&M、Gap Inc.の6社にアプローチし、組合の要求する最低賃金引き上げに対する意見を求めた結果、いずれの会社も提案支持を表明しなかった。WalmartとNikeは回答を示さず、Adidas、Levi’s、H&M、Gapの4社は現在進められている賃金交渉をサポートすることだけを強調した。

「H&Mは、カンボジアの縫製産業における透明性のある最低賃金の定期交渉プロセスを歓迎します。」と同社の広報担当者であるUlrika Isaksson氏は述べた。「我々は当事者同士が誠実に交渉し、双方にとって受け入れられる結果となることを強く願っています。」

H&Mは2014年に労働者は「適正な生活賃金を受ける権利を持っている」ことを主張し、書簡をカンボジアの副首相に送ったグループの一員であった。

労働者の権利団体らは、欧米のブランドは今こそ強い意志を示すべきだとしている。

「彼らは労働組合の賃金引上げ提案をバックアップし、責任を持って実行すべきです。」とミャンマーを拠点としてビジネスと人権に関するコンサルティングを行うIrene Pietropaoli氏は述べた。「彼らにはそのような法的義務はないものの、明らかにこの交渉の鍵を握る存在なのです。そのため彼らは自ら率先して「影響力」を行使し、ビジネスと人権に関する国連フレームワークの文言を利用するなどして、政府に影響を及ぼしていく倫理的な責任があると考えます。」

2011年に国連人権理事会によって起草、承認されたこの画期的な文書は、企業に対して「人権に対する不利益」を防止するために、彼らの「影響力」を行使することを求めている。

労働者の側からすると、(交渉の成否は)正にこれにかかっている。労働組合や権利団体の国際的な提携組織であるアジア最低賃金同盟(Asia Floor Wage Alliance)は、衣料品産業に焦点を当て、カンボジアの「生活賃金」は月額283米ドルであると算出、その額は組合の要求する額よりもはるかに高いと主張した。

 

(後編へつづく)

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最終更新:2016年09月28日06:07

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