インドシナニュース

ベトナム:アパレル産業の活況を維持するには政府の中小企業支援が必要(後)

(前編より)

 

繊維・アパレル産業において高付加価値の別プロセスへ進出していくには、デザイン、ブランディング、マーケティング、保険やファイナンスを含む物流など、下流関連産業の開発が求められている。(逆に)こうした下流関連産業の開発は、石油化学や高額の研究開発費を必要とするその他の産業など、上流の資本集約産業に対する進出を意味する。産業の高度化には新しいビジネスモデルが必要となるが、どの分野にベトナムは着手すべきであろうか?

TPPの原産国ルールでは、加盟国に対する市場優先参入権を享受するために、原糸からの全アパレル製品においてTPP加盟国内で調達することが求められている。TPPを見越し、中国、韓国、日本と台湾企業はベトナムの下流関連産業に投資を計画している。アパレル部門におけるこうした資本集約的な投資は高い固定費がかかるため、外資系多国籍企業の長期的なコミットを反映していると言える。(外資系企業による)技術波及の恩恵を受け、高い生産性を実現するために、ベトナム産業では次のような2つの一見矛盾する取り組みを実現する必要がある。

一つは政府による公共財の整備提供である。道路、港湾、電力など適切なインフラの欠如は、産業の上流から下流への投資を高額なものとし、産業の高度化の妨げとなる。もちろんこのことは繊維・アパレル部門の利益になるばかりではない。いったん異なる産業間の関係が構築されればコスト低減につながり、ベトナムの起業家らは上流から下流産業を高度化するための必要なスキル、技術や設備に投資することが可能となるであろう。

二つめは、国有企業の民営化やコーポレート・ガバナンス改革により、産業育成に必要な起業家精神を育成することである。国有企業のマネージャーらは、商業的成功に対する動機を欠いており、土地や資本を保有していることによる経済的な利益に甘んじているが、こうしたマインドは正される必要がある。政府は、効率的な事業運営を奨励するよう取り組まなければならない。

包括的かつ持続的な成長を達成するには、競争市場により民間部門にも土地や資本が配分されることが不可欠である。こうした市場原理の導入は、全企業の97%を占め、全労働人口の75%近くを雇用する中小企業(SME)の利益にもなるはずである。

政府は、中小企業ファイナンスの支援、外資系多国籍企業との合弁事業の促進や自由貿易協定を活用できるようなスキームを開発する必要がある。こうした特権は従来国有企業によって独占されてきており、民間企業にもそれらを解放するには既得権益闘争となる。しかしそうした取り組みが繊維・衣料品産業に革新的かつ包括的な効果をもたらし、将来のベトナムの成長に向けた持続可能な道筋となるであろう。

 

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最終更新:2016年08月05日12:01

ベトナム:アパレル産業の活況を維持するには政府の中小企業支援が必要(前)

ベトナムは、わずか25年で世界の最貧国から中所得経済の一つへと変貌を遂げた。1986年以降、ベトナムは国有企業(SOE)改革、民間産業開発、金融改革、公共支出政策や貿易自由化を含む様々な分野において重要な構造改革に着手してきた。

世界銀行は、ベトナム政府がさらに多くの構造改革や制度改革に取り組んだ場合、2035年までに今日のマレーシアと同等の所得水準になり得ると予測している。

この構造改革の恩恵を受ける産業の一つとして、繊維・アパレル産業が挙げられる。繊維・アパレル産業は250万人以上の労働者を擁するベトナム最大の雇用創出産業で、工業部門における総労働力の約25%がこの産業に属し、ベトナムの輸出売上高(2015年は272億米ドル)の約17%を占めている。この産業はグローバル・サプライチェーンにおける最も低付加価値の領域に特化している。農村部から移住した労働者らは、繊維・アパレル輸出の78%を占める衣料品の裁断-縫製-仕上げ作業を専門にトレーニングされる。一方でマーケティングや流通などの産業は未発達であり、外国企業に大きく依存している。

現在、繊維・アパレル業界には約6000社近くあるが、そのうち2%が国有企業、15%が外資系企業、83%は民間企業となっている。数の上では少ないが、国有企業は市場を支配する生産者であり、外資系企業がベトナムの低コスト労働力を利用しようとする際に、ゲートウェイとしての役割を担っている。

1995年にはVinatexと呼ばれる国有企業コングロマリットが、技術改善、近代的経営、投資やファイナンスなど多様化された事業を推進していくために設立された。しかしながらVinatexはこの統合以降20年間、産業に何ら改革をもたらしていないばかりか、多くの国有企業では借金まみれとなっている。腐敗し、非効率な国有企業を活性化すべきとするプレッシャーの高まりに応じて、Vinatexは2014年にその株式の49%を新規株式公開(IPO)した。そして51%は政府所有としたまま、120以上の合資、合弁企業を設立した。

ベトナムは、工業化において次の次元に移行していくのか、競争力を失っていくのか岐路に立たされている。ベトナムは、繊維・アパレル産業において長く外国資本を歓迎してきた。外資系企業は輸出売上高の60%を占めているが、国内企業と外資系企業の間にはビジネスのつながりはほとんどない。

例えば日本企業は、自社の衣料品受注に対してベトナムの企業に下請けを依頼しているが、製糸や布地の生産施設に投資するなど、上流工程への産業の連鎖をもたらすことはない。ベトナムの人件費が増加してしまった場合、外国人投資家はバングラデシュ、スリランカなどさらに安い労働コストの国に移動することが予想されている。

ベトナムは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の主要な受益国となると期待されている。世界銀行は、TPPによりベトナムのGDPは2030年までに10%も上昇するとしている。この成長の多くは米国や日本に対する繊維・アパレル産業輸出からもたらされる、と予測されている。

ベトナムは労働集約的な衣料品部門においてコスト優位性を有している上、TPPによって大規模市場への優先参入権を利用することができる。しかしベトナムは、既存産業に対するサポート産業をさらに開発していく必要がある。

 

(後編につづく)

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最終更新:2016年08月05日06:01

ラオス:アパレル産業が取り残されるリスク

ラオスのアパレル産業は近年衰退の一途を辿っている。

総輸出売上高は、1995年の8700万米ドルから2011年にピークとなる2億1900万米ドルまで増加したものの、その後2015年の1億7400万ドルまで徐々に減少している。輸出に占める衣料品のシェアもまた、2001~2005年に約36%あったのが、2011~2015年にはわずか8%となった。

アパレル産業に対する外国直接投資も、1991~2000年に6500万米ドルあったが、2001~2010年には2900万米ドル、2011~2015年にはついに1000万米ドル未満まで急減した。この減少はどのように説明できるのであろうか?

ラオスのアパレル産業は競争力を失ってきた。ラオスのアパレル産業の比較優位(RCA)指数は、鉱業、電力や電子部品等のその他主要輸出品の出現により、2001~2005年に平均13であったのが、2011~2013年にはわずか4まで低下した。

アパレル産業のRCAはまだ1をかろうじて上回っている(すなわちラオスがまだ、この産業で比較優位性を保っていることを意味する)が、この産業がじわじわと競争力を失っているという衰退のシグナルでもある。

世界市場での需要減少は、この衰退の大きな理由の一つである。ラオスのアパレル産業の大部分は、裁断・縫製・仕上げ(CMT)サービスであり、多くは近隣諸国にある大企業の下請業務である。ラオス産業の規模は、近隣の競合他社よりもはるかに小さい。

縫製工場のほとんどは、内需が弱いため、その生産量を輸出需要に依っている。そのため欧州経済やその他市場の需要低迷は、ラオスのアパレル生産の受注減少に直結する。またラオス縫製産業協会は、最近欧州市場では発注を減らすだけでなく、その需要も安価な製品へとシフトしているようだ、と示唆した。

労働力不足は、この業界における大きなボトルネックとなっている。2012年のタイにおける最低賃金の大幅な増加により、タイの労働市場はラオスを含めた近隣諸国の労働者にとって非常に魅力的なものとなった。

また国内労働市場においても、活況を呈しているサービス部門や製造部門など、他の産業との労働者獲得競争が起きており、特に経済特区で熾烈となっている。そのため特に主要な製造拠点において、アパレル産業が労働力を確保し、それを繋ぎ止めることがますます困難になっている。

アパレル産業における低い労働生産性は、製品当り生産コストの上昇につながる。ラオスの名目最低賃金は地域内でも非常に競争力がある一方で、その労働生産性は近隣諸国と比べて著しく低い。

そのため、労働生産性を加味した実質賃金はかなり高く、結果として利益幅は非常に薄くなっている。この傾向は特にCMTベースの工場で顕著で、賃金が彼らの生産コストの半分以上を占めている。

また、ラオスのアパレル産業においてサポート産業が不足している。必要な資材の大半は、たいてい親企業、契約業者やバイヤーを通じて海外から調達している。ダンボール資材が国内で調達できる唯一の資材という状況である。

国内資材の欠如は、川下業務を取り込む可能性を制限する。小規模なラオスのアパレル産業は、民間部門での経験や処理能力が少ないため、地域やグローバルのサプライチェーンに組み込まれた小さな工程において、シンプルなCMTサービスに特化せざるを得ない。サポート産業の不足もラオスのアパレル産業の発展を妨げてきた。

ラオスのアパレル産業を支援するために一体何を行うことができるであろうか?すぐに着手可能な手段としては、農業から製造業への労働力の移動を促すことによって、より多くの労働力をこの産業に動員することである。

このような動きを促進するために、農業と製造業間の賃金格差を十分に高くする必要がある。各社で独自に賃金を増加させることは業界に高い負担をかける。そのため政府は、労働生産性を向上させ、労働者に対して労働基準や行動規範に関する教育を実施するために、さらなるサポートを提供する必要がある。

ラオスのアパレル産業はアセアン諸国とともに成長することができるよう、特にベトナム、タイ、カンボジアの大企業など、アセアン域内のアパレル製造各社との連携を強めていく必要がある。このアセアン域市場は、各国の強みや限界に基づいた労働部門を持つ一つの統合された生産ブロックとして、グローバルサプライチェーンにおいてより良い扱いを受けることが可能になるだろう。

 

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最終更新:2016年06月13日06:03

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