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ベトナム:TPPに伴う労働改革は政府の対応次第か

ベトナム国内の労働組合を強化するというワシントン・ハノイ間の協定は、労働者にとっては交渉力を強める朗報かもしれないが、ベトナムがこの協定をどのように履行するかによりインパクトは異なったものとなるであろうとベトナム政府のアドバイザーを長く勤めた人々や専門家などが語った。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の付帯決議により、ベトナムは独立した労働組合の合法化のための法案を可決し、労働組合がストライキを行うことやAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議)等の国外の労働団体に支援を求めることを可能にすることが求められている。

TPPはアメリカ連邦議会での議論に直面している。オバマ政権は自由貿易協定により労働組合や労働者の権利が弱い他国に雇用が移動してしまうのではないかという民主党の懸念を払拭することを狙っている。

ベトナムの憲法は労働者がストライキを行い、組織された抗議活動を行う権利を定めているとハノイの著名な経済学者で政府系研究機関の元幹部であるLe Dang Doanh氏は話す。しかし今までのところ、ベトナムでこうした労働者の権利を守るため成文化された法律は幾つかにすぎない。

結果として、この協定は「ベトナムにとって非常に好ましいステップ」であるとDoanh氏は語る。彼は長年にわたる市場経済化の支持者であり、過去25年間にわたり、経済面でいくつもの政府規制の段階的な緩和が行われる中、ベトナム政府首脳部に助言を行ってきた。

ベトナム商工会議所の元会長であり、首相府の上級アドバイザーでもあったPham Chi Lan氏も、この協定は重要な譲歩となると話す。

「この協定に合意するというのはベトナムにとっては大きな妥協です」と彼女は話す。

しかし、世界的な法律事務所Freshfields Bruckhaus Deringerのハノイ市、ホーチミン市事務所の執行役員Tony Foster氏は、TPPにおける労使規定は予期できたことであり、それがどの程度ベトナムに変化をもたらすことができるかは不透明だと話す。

本当の問題は、この協定がどの程度労働組合の影響力と独立性を拡大するのかであるとFoster氏は言う。

「問題はこの協定の多くの条項の詳細に潜んでいます。本当に要求されることを決めるために、関係者は非常に注意深く文書の解析を進めていると思います」とFoster氏はハノイでの電話インタビューで答えた。「政府にとっては微妙なバランスが求められる問題になりますが、おおむね、それに従うことにはなるでしょう」

多国籍企業はこの秋ベトナムへの投資に今まで以上に興味を示していたが、TPPへの労使関連の付帯事項はそうした企業に少々懸念を招いたとFoster氏は話す。

過去10年間、ベトナムの工場は毎年春に数多くの山猫ストに見舞われてきた。時として、こうしたストには1箇所で数千人の労働者が参加することもあった。こうしたストはテト(旧正月)の祭り近くに起こることが多く、旧正月前の年次ボーナスの額に対する労働者の不満が引き金となっていた。

ベトナムには政府が保障するストライキ実施の際の行政的手続きがある。しかし、この手続きは非常に官僚的なものであるため、労働者がそれに従うことはほとんど無い。2008年から2009年の世界金融恐慌直後からの国内インフレ率が非常に高かった時期には特に、ベトナム政府は労働者の不満解消と賃上げ要求のため山猫ストを容認してきた。

1998年のスハルト大統領失脚前のインドネシアのように独裁的支配にあった国とは異なり、ベトナムには合法化の恩恵に与れるような大規模な地下労働運動は存在しない。ベトナムの山猫ストへの寛容性は、結果として地下労働運動の結成を阻んできたのかもしれない。

ドイツとオーストラリアの労働組合関連組織がすでに数年に渡ってベトナムに事務所を置いており、政府系の労働組合と協力し、さらなる労働者の権利向上を働きかけている。アメリカの労働団体は、現在までベトナムではあまり活発ではない。その理由のひとつとしてはベトナム戦争に関する歴史的経緯があり、ベトナムの国内問題へのアメリカの介入には細心の注意を払う必要があるためでもある。

11月5日にTPPの本文内容が公開された後、ハノイのベトナム政府の官僚2名に連絡したものの、この問題についてのコメントを得ることはできなかった。しかし、政府の管轄下にあるベトナム総合労働連盟労使関係部のLe Dinh Quang副部長は、協定を歓迎している

「これは私達にとっては非常に大きな挑戦になりますが、国の利益、世界の統合、そして労働者の権利と利益のために、解決策を見つけなければなりません。これはベトナムの労働者にとって非常によいことだと理解しています」とQuang副部長は電話インタビューで回答している。

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最終更新:2015年12月12日06:20

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