インドシナニュース

衣料品製造産業は本当に中国から撤退していっているのか(後)

(前編より)

 

好調なインド

とはいえ、中国と競合している調達先の国々の幹部の主張も同様に、統計で裏づけられている。

「私たちのインドからの調達ビジネスは、ここ2年の間に3倍になりました。」とアメリカを拠点とする女性向け衣料・アクセサリーブランドのAdrianna Papellの最高執行責任者(COO)、Ashesh Amin氏は話す。彼は、「(中国の工場での)注文を供給するまでのリードタイムは10%~20%増え、価格も6%~8%上昇しました。」と言う。

Amin氏によると、中国から生産拠点を移すトレンドは確かにあるが、去年の10月にようやく始まったものであり、旧正月である2月以降、加速しているという。衣料品製造に従事していた労働者たちは、もっと面白い仕事に移っていっている。「以前は、インドから中国に生地を輸送していましたが、今は、インドで同じ製品が作られることを期待しています。」と彼は語った。

Amin氏は、ルピーが割安であり、エネルギーのコストも低いため、国際的にインドがコストの安い衣料品調達地になっていると話す。また、「インドの企業は機械の輸入を増やし、工場を近代化しています。」とも語った。

インドの衣料品輸出促進協議会(AEPC)は、2015年3月までの今会計年度で、10%の輸出成長を予想している。その結果、インドの衣料品輸出額は165億米ドルに達する見込みだ。

 

上昇傾向のバングラデシュ

バングラデシュの衣料品製造業者もインドと同様に楽観的である。バングラデシュ衣料品製造・輸出業者協会(BGMEA)、前副会長のFaruque Hassan氏は、バングラデシュの企業は、中国での生産コスト上昇により生み出された新しいチャンスをつかむため、工場のグレードアップと安全対策に投資をしていると話した。

一方で、彼は中国からの調達地の流出傾向を生かす、バングラデシュの能力の妨げとなっている課題についても触れた。政治不安、品質と物流の改善を維持する必要性といったものだ。

恩恵を最大に受けるためには、「私たちは労働者のスキルと港の最大取扱量を強化し、ダッカ~チッタゴン間の高速道路を改善する必要があります。」と本紙に話した。

BGMEAの会長であるMohammed Atiqul Islam氏は、不安定な電力供給がバングラデシュの衣料品製造市場のグローバルシェアを増やすのを妨げているもう一つの障壁だと話した。現在、中国の38%に比べ、バングラデシュの市場シェアは5%しかない。

バングラデシュが生産性と効率性を改善しないかぎり、コストの低い衣料品製造者としての強みを失ってしまうだろうと指摘した。「改善できなければ、インド、ベトナム、カンボジア、スリランカ、そしてミャンマーといった国々がチャンスをものにすることになります。」と彼は本紙に語った。また、もしバングラデシュが成功すれば、「そうすれば、中国にも輸出できるようになるでしょう。」とも話す。

バングラデシュは現在、中国に次いで、世界で2番目に主要な衣料品の輸出国である。およそ4500の工場で、450万人の人が働いている。バングラデシュの輸出促進局によると、衣料品の輸出は、今年3月までの9か月間で、年率換算で3.16%上昇し、約186億米ドルに達した。

ダッカにあるシンクタンク、Centre for Policy Dialogueの追加調査ディレクターであるKhondaker Golam Moazzem博士は、中国からの新たな調達拠点移転を取り込めるかは、バングラデシュがどのように国内の政治不安と、とりわけ、不安定な為替変動といった外部要因に取り組めるかどうかにかかっていると主張する。「バイヤーが中国から離れているからといって、バングラデシュに発注先が移るという確かな保証なんてないのです。」と彼は本紙に語った。

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年06月12日14:02

衣料品製造産業は本当に中国から撤退していっているのか(前)

中国と他の国両方の専門家は衣料品製造が中国から他の拠点へと急激に移っているという考えに賛成はしていない。

何年にもおよぶ強い経済成長の結果、中国の衣料品製造業従事者の給料は増え、結果として、中国における織物・衣料品製造のコストが引きあがった。そして、カンボジアやベトナム、バングラデシュ、インドといった、よりコストの低い国へ、中国から生産拠点が移った企業があるのは事実だが、中国の衣料品製造業の縮小現象は誇張されすぎていると専門家はいう。

 

「中国の全体の経済状況は変わってきています。環境規制がより厳しくなり、土地や労働者のコストも上がっており、それら全てが影響しています。しかし、東南アジアへ拠点を移している衣料品製造は、いくつかの外国ブランド専用に、輸出向けに契約をしている生産工場に限られています。」と中国紡織工業連合会(CNTAC)の国際貿易部副理事、Zhao Hong氏は主張する。CNTACは、中国の全織物・衣料品組織の全国連盟である。

Zhao氏は、中国国家統計局のデータによると、国の衣料品製造分野は減少しているというより、合併していっているという。年間販売売上が2000万人民元(320万米ドル)を超える織物・衣料品製造企業の数は、2014年には11.5%減少し、38,319社となったが、業界全体の収益は6.1%上昇し、3600億人民元(581億米ドル)に達した。

2014年は、アメリカやヨーロッパ、日本といった主要な輸出市場では経済が低迷した年であったが、中国の10916社の衣料品製造業者は前年比1.6%増となる296億着の衣料品を生産した。業界の健全な状態を裏づける他の指標として、中国の織物産業による固定資産への投資は2014年に著しく増え、13.4%増の1兆人民元(1610億米ドル)に達した。

 

製造業の通説

イギリスを拠点とするコンサルタント企業で、GapやMarks & Spencer、NextやThe Limitedといった有名ファッション小売り企業を顧客に持つClothesource Limited社の最高経営責任者、Mike Flanagan氏もまた、中国から衣料品製造の拠点が離れていっているというのは、ただの通説にすぎないと考える専門家の一人だ。

「世界市場は成長しているため、多くの製造業者がより大きなシェアを獲得してきています。実際に起こっているのは、そのうちの一部の中国企業所有の製造者が、他の国に移転していっているということなのです。」と彼は言う。

Flanagan氏によると、中国内の工場が合併しているのは事実だが、「実質的には、中国資本の衣料品製造企業の100%が存続しています。」

中国の製造業者が、賃金が上昇することで、国際社会の中で中国の衣料品製造産業の競争力が低下することを心配するのはもっともだが、他のアジアの国々でも、同程度のスピードで賃金が上昇していることは明らかだと強調した。そして、これらの国々は、効率性とインフラの面で中国に大きく遅れをとっている。

「企業が皆中国を離れていっているという、くだらない主張のほとんどは、自分たちの国に人々の興味をひきつけておきたい、バングラデシュ、インド、ベトナムの衣料品製造業者のものです。」とFlanagan氏は話す。

「彼らはまた、政府にインフラへの支出を増やしてほしいのです、またおそらく、より関連性のあるものとして、1990年代後半と21世紀の始めにインドネシアで起きたことが自国で起こってほしくないと思っているのです。」

Flanagan氏によると、そのころ銀行業界は、「業界全体で、遅かれ早かれ、衣料品製造はインドネシアから撤退すると判断していました。」その結果、地元の製造業者に資金を貸すのを止めてしまい、衣料品製造業の衰退を引き起こした。

 

(後編につづく)

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年06月12日06:02

インドネシア:繊維などの輸出製造業、コスト高でルピア安でも伸び悩み

インドネシアはアジア通貨危機において深刻な打撃を受け、同国の経済は1998年には13%ものマイナス成長となった。だがインドネシアの通貨ルピアが下落したことで輸出が促進され、成長軌道へと回復を果たした。

現在、東南アジアの経済大国インドネシアの経済成長率は5%と、この5年間で最も低い。一方で通貨も最近、1998年以来となる最低水準に下落した。

昨年6月以降、ルピアは対米ドルで9.3%下落しているが、こうしたことから衣料品や履物などインドネシア製品を輸出するメーカーは、価格を引き下げたり、オーダーを獲得したりすることができるはずである。

だが実際には、人件費の上昇やその他の要因などによって、そのような状況には至っていない。またインフラや官僚主義などの問題により、工場が今後輸出を促進させたり、国を後押ししたりすることはできるのかという先行きの不安が、さらに強まっている。何年もの間、国の成長を促してきた石炭価格の上昇や物価の上昇などは今や過去の話である。

全国経営者協会のHariyadi Sukamdani会長は、「本当に頭を抱えています」といい、「賃金やコストは毎年のように上昇しています」と続けた。

インドネシアは、国の重要な輸出品である繊維製品において、他国との競争に苦心している。輸出量は数年にわたって増加してきたが、例えばベトナムの縫製産業などは、2000年にはその規模は小さなものだったが、今でははるかに多くの衣料品を輸出している。

国連の統計によると、ベトナムは2000年には、衣料品の輸出国として世界の上位30カ国に入る程度だったが、今では世界第7位となっており、13年の輸出額は179億米ドルだった。

一方でインドネシアの順位は11位から14位まで下がり、国際貿易で獲得していた2.4%(4900億米ドル)のシェアは、1.6%(77億米ドル)にまで低下した。

 

賃金の高騰

東ジャバの木製・籐家具協会会長のNur Cahyadi氏の推定では今年、会員企業の売上額は4000万米ドル減少したという。というのも、欧州や米国の取引相手が、家具の発注先をベトナムへと切り替えたからだ。

ルピア安は輸出企業にとっては助けとなるはずなのだが、それだけでは総合的な競争力の低下は補えない。

工場所有者の多くが、最大の問題は賃金の高騰だという。賃金は、スハルト大統領が在任していた数十年間は低く抑えられていたが、今では、権限を持った労働組合や地方官僚などがこれを引き上げている。さらに2014年末の急激なインフレも、引き上げ要求にさらに拍車をかけることとなった。

JPモルガンによると、ルピアの実質的な貿易加重平均為替レートは、2014年半ばと比べると9.8%ルピア高になっているという。というのも、インドネシアのインフレ率は、競合国と比較して高いからだ。

世界銀行・東南アジア地域担当のチーフエコノミスト、Sudhir Shetty氏は、これについて輸出企業にとっては「非常に致命的」だと述べた。

東ジャバの履物協会会長のAli Mas'ud氏は、同地のメーカーに「競争力がない」のは、1カ月の最低賃金がここ3年で倍増し、270万ルピア(約209米ドル)になったことが主な要因だとしている。

 

「法律など無きに等しい」

インドネシア繊維協会のAde Sudrajat会長は、賃金の引き上げについて、それが公的な仕組みに沿って設定されたものであれば、問題は生じないだろうとしている。だが地方政府は、労働者の反対運動などによって決定事項を変更することがある。

Sudrajat会長は「こうした状況では、法律などないようなもの。無政府状態のようなものです」と話した。

巨大な国内市場を有していることから、インドネシアでは対内投資への機運が高まっている。同国は、家具や衣料品、電化製品などの輸出において世界的に押され気味だが、ゼロからのスタートにもかかわらず、自動車輸出ではその世界シェアを伸ばしている。

だが製造業においては、今なお本領は発揮されていない。

モルガン・スタンレーでは、その他の産業は物価上昇によって市場から締め出されたものと考えている。製造業による輸出では、インドネシアの世界シェアは、上は2000年の0.8%から下は08年の0.5%まで低下した。この理由として、1つには実質為替レートが上昇したことが挙げられる。

世界銀行のShetty氏は、広範囲な改革を実施してコスト増を抑制しなければ、ルピアが対米ドルで下落しても、輸出が増えることはないだろうと述べた。そして「為替レートの変動から得られるものもありますが、結局、必要なのは競争力なのです」と続けた。

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年04月23日14:03

南アジア・東南アジアで撚糸業が拡大中

米国農務省が発行した最新の報告書Cotton: World Market and Trendsによると、南アジアおよび東南アジアで撚糸業が急速に拡大しつつあり、この傾向は続くことが予測されるという。

インド、インドネシア、バングラデシュ、ベトナムでの成長により、南アジアおよび東南アジアの撚糸業は2011-12年に中国の生産量を追い越し、そしてその後も成長を続けている。同時期に、世界のそれ以外の地域での撚糸業はほぼ同程度で推移している。

農務省の報告書によると、南アジアおよび東南アジアでの撚糸産業の成長は、中国での綿の国内価格の高騰と、過去10年にわたって中国が撚糸業において独占的な地位を占めていたことによるものだとしている。

中国での綿の消費量は1960年から2000年にかけては世界全体のおよそ20-25%であったが、2000年から2010年にかけては世界全体の40%を占めるまでとなった。全世界のおよそ5分の2が消費される中国での政策変化は世界中に影響を与える恐れがあった。

中国が在庫蓄積と価格保持政策を開始した時、中国での綿の国内価格は高騰し、世界平均より高い状態が継続した。この影響により、撚糸業は近隣諸国に流出した。

中国での昨年の人件費の上昇、農作物補助金の低減、輸入規制の強化により、南アジアおよび東南アジアにおける撚糸業は今後も急速に拡大を続けることが予想されている。

それに従って、近年と比較すると、中国が世界の綿消費量に占めるシェアは低くなることが予測されると米国農務省は結論づけている。

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年04月17日14:00

ベトナム:高級ショッピングセンターは成功するのか?

ベトナムでは富裕層が増加し高級品の需要も高まっているが、高級ショッピングセンターは依然として不振にあえいでいるようだ。

 

Trang Tien Plaza、ショッピングセンター、Parkson

7年前、ベトナム建設省のある高官が、首都ハノイHa Dong区で開発中のショッピングセンターの起工式で、大型商業施設の建設が急激に進むなか「ベトナムは、ブランド品だけを扱うような高級ショッピングセンターを建設するには不向きな場所だ」と発言した。出席者の多くがこの意見に反対したが、高官の予測はその後現実のものとなった。ハノイの高級ショッピングセンターは現在、その多くが休業しているか、業績不振に陥っている。

 

Trang Tien Plaza

Trang Tien Plazaは、ハノイ中心部の一等地に建つ高級ショッピングセンターである。同店は昨年12月末、4カ月の休業を経て、公式に営業を再開した。Trang Tien Plazaが営業を休止し、店舗の再編を余儀なくされたのはこれで2度目だ。

営業再開後、店内には数万ドンから数十万ドンの人気商品を扱うテナントが増え、アナリストらは「すっかり様変わりした」とコメントする。以前は、数百万ドンの高級品しか扱っていなかったからだ。これによって、Trang Tien Plazaが今や、富裕層のみをターゲットにしているのではなく、他の所得者層も視野に入れていることが明らかになった。

ベトナム建設連盟のPham Sy Liem副代表は、社会にはさまざまな所得水準が存在するため、理論上は、高級品も低価格商品もどちらも需要があるのだと説明する。つまり投資家には、ベトナムに高級ショッピングセンターを開発しようとするだけの根拠があるわけだ。

 

高級ショッピングセンター

だがLiem副代表は、投資家のこうしたビジネス・プランは、ベトナムでは完全に失敗に終わるかもしれないとみている。理由は、ベトナム人の特殊な消費パターンにある。

同副代表は「当たり前のことですが、低所得者層は、必要な物を購入するために、例えばTrang Tien Plazaのような高級ショッピングセンターには行かないでしょう。一方で、高級ショッピングセンターで買い物できるような富裕層も、やはりそこでは買い物をしないのです」と話した。

市場調査によると、富裕層は、高級ショッピングセンターではなく、別の場所や手段で品物を手に入れる傾向にあるという。例えばインターネットを通じて購入したり、あるいは陸路や空路でベトナムに品物を持ち込む旅行者などから手に入れたりする。

ブランドに詳しいある専門家の話では、ベトナム人の富裕層は、ユニークな製品は販売元から手に入れるという「純粋な」考えを持っているという。そして「ショッピングセンターで扱っている商品は、誰でも買うことができます。従ってそこで手に入る物は、富裕層や好みにうるさいバイヤーにとっては、珍しい物やユニークな物だとは言えないのです」と説明した。

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年03月07日06:00

中国の人件費高騰で東南アジアに向かう外国企業

優遇税制の廃止に加えて人件費高騰で中国大陸の魅力は激減

 

中国経済の混乱にはさらに隠された理由がある。多国籍企業が高い費用対効果を求め中国から東南アジア諸国に生産拠点を移転することによる、東南アジアへの雇用の流出である。

「中国の労働市場にとって東南アジアは脅威であると確信しています」人材派遣会社HaysのChristine Wrightアジア支社長は語る。「ベトナムやフィリピンなどは中国より大幅にコストがかかりませんし、今後さらに多くの会社がそちらに生産拠点を立ち上げることになるでしょう」

中国はかつて世界の工場であり、その豊富な労働力と安価な人件費に魅力を感じる世界中の企業の投資を引きつけてきた。企業は同時に中国の猛烈な経済発展の恩恵を受けることもできた。

しかし、外国資本をめぐるアジア地域での争いはここ2年間で新たな局面を迎えることとなった。賃金の高騰とともに、世界一の人口を擁するこの市場からの資本の引上げが始まった。2009年に中国政府が海外投資家に対する優遇税制の撤廃を決定すると、海外の製造業者が中国に見ていた輝きは次第に失われ、上昇傾向の人件費が景気の見通しにさらに暗い影を落とした。

Hays社の賃金調査によると、中国に拠点を置く企業の66%が2014年に6%以上の昇給を従業員に与えているが、同様の昇給を計画している企業はアジア地域平均で29%に過ぎない。中国における賃金の上昇傾向は2015年も継続し、70%の企業が最低でも6%の昇給を計画しているが、アジア全域で同様の昇給を計画している企業は30%しかない。

日本のファスナー製造業者のマネージャーChen Junjie氏は、一生懸命働いても必ずしも報われるとは限らないと感じている。

「高い給与は私のような従業員にとっては脅威になりうるのです。アパレルメーカーや自動車メーカーといった顧客は東南アジアに移転していきました。勤勉に働いて今日昇給を得ても、それはまもなく会社が私たちを解雇する理由となるのではないかと心配になるわけです」

中国では海外資本の企業が5000万人もの雇用を創出してきた。海外企業の移転で失われる総雇用数を推計することは容易ではないが、いままでの事例から見るに雇用の喪失は深刻で、かつ多方面に及んでいる。

「縫製産業など労働集約的な産業の労働者は他の技能がないため、新しい仕事を見つけることは非常に難しいでしょう。」Joinlink Consulting社のヘッドハンターHong Lingyun氏は話す。

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年02月26日14:03

アジア繊維産業、新たな競争相手のアフリカに対峙

2014年はアジアの繊維産業にとって激動の年であった。中国での労働賃金高騰、カンボジアでの暴力的な労働者抗議、バングラデシュでの工場崩壊は大ニュースになった悪いニュースのほんの一部である。しかしそれらの事件は、極東における業界全体が移行段階にあるようだという事実を指している。

中国海岸沿いの主要な産業中心地では現在の賃金がおよそ500ドル/月、国内では250ドル/月で、中国はすでに安い衣料品生産国としての魅力を失っており、海外のアパレル小売業者は近年、バングラデシュとカンボジアの工場に頼っている。

バングラデシュとカンボジアの繊維部門はそれぞれ、440万人を雇用する250億ドル産業、65万以上の工場労働者を持つ55億ドル産業に成長した。

しかし、これらの最安衣料生産国の労働者は次第に賃金引上げを求めて訴えている。バングラデシュは昨年深刻な労働争議の後、繊維労働者の最低賃金を68ドルに上げた。カンボジアでは2014年11月に労働大臣が、国内の縫製労働者の新たな月額最低賃金をほんの数年前の75ドルから128ドルに設定した。バングラデシュのほぼ倍になる。

スウェーデンのチェーンH&M、スペインの衣料品大手Inditex、米国を拠点とするウォルマートなどの世界的な衣料ブランドもバングラデシュやカンボジアから商品を調達しているが、そのわずかに高くなった賃金は彼らのビジネスモデルにさほど影響を与えていない。なぜなら世界の繊維小売業界における人件費は、マーケティング、輸送、販売、関税、税金の費用を含む全体の生産コストの2%~3%にもならない。

賃金引上げにより、利益が切迫されて苦しむのは現地繊維生産会社だ。

しかし繊維小売業者はすでにアジアに代わる生産拠点を見つけている。H&MはTesco、Primarkと共に、アフリカのエチオピアから衣料品の調達を始めている。エチオピアでは産業労働者の最低賃金はなく、未熟練の縫製労働者は月給35ドルから40ドルと、明らかにバングラデシュの労働コストより安い賃金で働いている。

海外の繊維投資家らを非常に歓迎しており、低賃金労働力(都市の失業率は20%近く)や安価エネルギー、安い国産綿の豊富さから利益を得ている。隣国ケニアでも繊維産業は拡大している。ケニアの月給は約120ドルだが、政府は手厚い優遇策で製造業者らを誘い込もうとしている。

観測筋によると、東アフリカ諸国は繊維生産の面で、東アジアに代わる重大な可能性を持っているかもしれないと言う。低い人件費はさておき、極東の遠い国からよりむしろアフリカからヨーロッパや米国の主要市場へ繊維製品を出荷するほうが、より迅速で安価である。アフリカ諸国も2000年に締結された特別貿易協定の下で、米国繊維市場へ関税なしで輸入できる。天然綿花生産の活用と拡大、国内原材料の使用により、生産者は高価な輸入をしなくて済み、それぞれの国で繊維産業の経済的価値を集約できる。

東アジア諸国にとって、この動きは付加価値産業への移行を意味する。

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2015年01月10日06:00

アジア新興国における最低賃金の現状

東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国が成長を続けている。なかでも成長の軸となる主要5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールおよびタイ)はASEAN 5と呼ばれ、これまで外国直接投資(FDI)を呼び込むけん引役となってきた。だが残りの5カ国もまた、加盟国内での互いの格差を縮め始めている。

ASEAN 5を除く5カ国が掲げる主な利点の1つに、他の国よりも最低賃金が低いことが挙げられる。つまりこれらの国を生産拠点とした場合、企業は生産コストを抑えられるというわけだ。各国政府はこれを強みとしてしばしばアピールしてきたが、過去に発展してきた国々を見てみると、この5カ国の賃金もいずれ引き上げられるものと考えられる。事実、賃金上昇を求める労働争議は日常的になっており、なかには賃上げを発表した国もある。

2014年時点における、これら5カ国の最低賃金は以下のとおりである。

 

カンボジア

カンボジアの最低賃金は現在、1カ月約96米ドルだが、その賃金額がここ数カ月、大きな注目を集めている。なかでも縫製労働者が賃上げを要求しており、中立労組らも140ドルへ値上げするよう求めている。この問題は欧米諸国とも関係がある。と言うのも、ナイキやギャップ、Zaraなど多くの有名企業がカンボジアを生産拠点としているからだ。

カンボジア政府は今月、アパレル産業の要求を受け入れ最低賃金の引き上げを発表したが、その額は労組らの要求を下回るものだった。これにより同産業の最低賃金は28%上昇し、約123ドルになる。労働者らがこの額に納得するかどうかは不明だが、カンボジア経済が海外企業の投資に大きく依存している以上、納得することが期待されている。

 

ラオス

ラオスの最低賃金は1991年以来5度改正されており、現在の賃金は2011年に施行されたもの。ラオスの国有メディアによると、多くの主要産業において、その代表者らは今夏、政府と会談し、改めて最低賃金の改正を行うよう話し合いを行ったという。だがこれまでのところ、この件に関する公式発表は行われていない。

 

ミャンマー

ミャンマーの最低賃金法は昨年3月に制定されたばかりだが、同国労働省は依然として、正式な賃金額を公表していない。だが実際には、産業によって最低賃金の水準は存在しており、例えば公務員の最低賃金は1カ月5万チャット(約50米ドル)と定められている。

ミャンマー政府は、その他の産業においても昨年末までに制定すると公言していたが、今のところまだ発表されていない。

包括的な最低賃金制度がなかなか施行されないことで、ここ数カ月、多くの産業から強い反発が出ている。つい先週も、ヤンゴンの木材加工工場が、労働権の改善を求めてストライキを起こした。ミャンマー政府による最低賃金の発表は、今後数週間のうちに行われる見通しである。

 

ベトナム

ベトナム政府は今月、最低賃金を15%引き上げると発表した。ベトナムではわずか5年の間に、4度の賃上げを行っている。2010年、最低賃金は地域別で平均9.9%引き上げられ、12年には30.1%、13年には15.2%の上昇となった。

ベトナム政府にとって、過去5年間にわたるこうした「挑戦」は、国民の所得の均等と、国が海外投資の魅力的な投資先になることとの、バランスを取るためのものだった。賃上げを行わなければ、国内の所得格差はますます広がり、社会的な格差が過去最高のレベルにまで拡大する恐れがある。だが言い方を変えれば、賃金の引き上げによって、海外企業がベトナムから撤退するリスクもあるわけだ。

来年施行される賃上げによって、ベトナムはASEAN 5を除く5カ国のなかで、最低賃金が最も高い国となる。だがそれほど心配する必要はないようだ。と言うのもベトナムの製造業は、ASEANのなかでも特に技術が高く、最低賃金を引き上げてもなお、ASEAN 5に負けないだけの競争力があると考えられているからだ。急速な経済成長を背景に、近年では海外企業もベトナムに殺到している。結果的に今回の賃上げは想定内であり、今後の経済成長にも否定的な影響は及ぼさないだろう。

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2014年12月02日06:00

独自のグローバル戦略で、生き残りを狙う海外アパレル・メーカー

カンボジアではこのほど、繊維、衣料品および靴・履物の各産業で働く労働者に対して、

月額の賃金を28%引き上げる決定をした。来年初頭より、賃金額は現行の月100ドルから128ドルに引き上げられる。だが新賃金について、労働組合は期待していた額を大幅に下回るものだと主張し、海外のアパレル・メーカーらは上げ幅が大きく支払いは困難だとしている。同時にこうした状況下、メーカーらはカンボジアで生産を続けるよう求められている。

今年9月、米国への衣料品輸出は急増した。米西海岸の主要港で港湾労働者の労働争議が続いていたことから、ホリデーシーズンに向けた貨物の輸送停滞を懸念した小売業者が、大量発注を続けためだ。これにより貿易相手国上位10カ国のうち4カ国(中国、ベトナム、インドネシア、インド)では輸出量が2桁増加と力強い伸びを示したが、反面バングラデシュでは7カ月連続の減少となった。

一方ミャンマーでは、米国、日本およびデンマークが協力して、ミャンマーが生産拠点や投資先としてより魅力的な国になるよう、労働者の権利と労働条件を改善しようとしている。

昨年、欧州連合(EU)の支援で始まったミャンマーのあるプロジェクトでは、縫製産業の技術・能力の向上を目指しており、つい先日も地元企業らが生産性の拡大について指導を受けていた。

衣料品小売のへネス・アンド・マウリッツ(H&M)社は、委託先工場に対して、エチオピアのオモ渓谷一帯で栽培された綿を使用しないよう指示している。この地域は、土地収用の恐れがあるためだ。だが現状では、その指示を聞き入れても、その綿を使用しないという絶対的な保証はない。

またC&A Foundationは「公正で持続的な縫製産業の発展を目指す、さらなる協力体制」を呼びかけている。C&A Foundationとは世界的なファッション・ブランド「C&A」が運営する民間組織で、環境に優しいコットンや労働環境の改善に焦点を当てた、全く新しい世界戦略に着手している。

一方、英小売大手のマークス&スペンサーが目指しているのは、小売メーカーとして世界で最も持続的な発展を遂げることであり、目標達成のために、同社の環境・倫理プログラム「プランA」を進めている。「プランA」実施部門のトップで、同プランを世界的に推進するAdam Elman氏は、計画が目指しているものや、産業連携のさらなる必要性などについて語った。

Clothesource Limited社のマイク・フラナガンCEOは、過去6年間で、アパレル業界のバイヤーは環境汚染に対する責任を認識するようになったと話す。こうした状況が続けば、2020年までには、有毒な成分を使用している製品はほとんどなくなるかもしれない。一方、中国は有害化学物質の規制に関する法律を遵守し、法的強制力のあるプログラムなどを導入することで、有害化学物質の廃絶を目指している。

新たな調査結果によれば、環境に配慮したLED照明もまた、縫製産業での生産性の向上や利益の拡大に役立っているという。LED照明は従来の照明よりも発熱量が少なく、工場の床が熱を持つこともないため、労働者の生産性を高めるほか、欠勤者の減少にもつながっている。

大手ジーンズ・メーカーのリーバイ・ストラウス社は今後、従業員500名の人員削減を行い、1億4300万ドル規模の取引の一環として、IT、金融、人材管理、カスタマー・サービス、広報など、グローバル・ビジネスにおけるサービスの一部を委託する。こうした体制の変更は、同社がグローバルな生産を進めるうえで、新たな局面を迎えたことを示している。

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2014年11月27日14:00

中国に続く生産国は?(後)

(前編より)

 

テキサス工科大学Free Market InstituteのBenjamin Powell所長は、仕事を探している者が自ら工場での低賃金労働を選ぶようなことがあれば、それはひどい選択肢のなかでもまだましなものを選んだに過ぎないのだと言う。「こうした国々に対して法律を課し、賃金の引き上げや労働条件の改善を義務付けることができたとしても、動機を持ってやって来た企業らはいずれ撤退するだろう。であれば、貧困のまま放置しておいた方が良いのでは」との見解を示した。

輸出の8~9割をアパレル製品が占めるハイチでは、労働基準に進歩の兆しがみえている。

「Better Work(衣料産業の発展を目指す国際労働機関(ILO)の提携プログラム)」で調査方針責任者を務めるArianna Rossi氏によれば、ハイチの労働条件はこれまでにも大幅に改善されてきたという。最低賃金は今年5月、1日あたり5ドルへと引き上げられた。Better Workの最新レポートでは、工場らはこの引き上げ令に対してほぼ全面的に従い、約37%の工場が少なくとも6.75ドルの日給を支払っていると伝えられた。

世間では衣料品の製造が雇用を生み出すとされているが、実際のところ、それを証明したものはこれまでのところ存在していない。稼働から2年が経ったハイチ北部の工業団地Caracolでは、米政府が1億2400万ドルという多額の出資をしたにも関わらず、当初計画されていた6万の雇用を大幅に下回る、わずか3000の雇用しか創出できなかった。さらに同工業団地の開発には米国務省、ヒラリー・クリントン前国務長官およびビル・クリントン元大統領による熱心な推進活動があったほか、ハイチから米国への輸入には、HOPE IIの貿易協定による無税特別措置または特恵関税も適用されていた。

Rossi氏は、Better Workによる研究プロジェクトを概念実証として引用し、企業らは今なお「労働者を優遇すればビジネスも成功する」ということに気付いている段階なのだと説明した。

だがNova氏のような専門家は、そう簡単には納得しない。一例として挙げれば、衣料産業に従事することで貧困から脱出できるのであれば、過去10年にわたり世界中で賃金が減少するようなことはなかったはずだとし、衣料産業の賃金は平均して「生活賃金」の約3分の1だと述べた。

衣料産業への従事が国家や個人の経済発展にとって有益であろうとなかろうと、ハイチやミャンマー、エチオピアといった国々はこの先、数々のブランド企業を盛大に受け入れることだろう。だがこれらブランド企業が今後、良心の呵責を感じるかどうかはまだ分からない。

 

 

» 続きを読む

その他 ジャンル:
最終更新:2014年11月07日14:00

«前のニュース || 1 | 2 | 3 |...| 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 || 次のニュース»
このページのトップへ戻る