インドシナニュース

2019年05月 のニュース一覧

<製造業の移動>貿易戦争により、ビジネスが 「世界の工場」から移転(後)

(前編より)

 

-労働問題-

中国の米国商工会議所が今月行った調査によると、中国にある米国企業の40%以上が、東南アジアやメキシコなどへの移転を検討しているか、すでに検討したことがあるという。

しかし、この移行は一筋縄ではいかなそうだ。東南アジアは低賃金労働国であるが(中国の約540米ドルに比べ、ベトナムの工場の月給は約290米ドル、カンボジアとインドネシアの工場の月給は180米ドル)、労働者の経験が浅い。

「中国では人件費は3倍ですが、効率も3倍です」と、ベトナムの米国商工会議所の製造委員会の共同議長であるFrank Weiand氏は述べる。また、利用できる労働力のプールが小さいということもある。

国際労働機関のデータによると、ベトナムの製造業部門の従業員数は約1000万人で、中国は16600万人である。また、インドネシアが1750万人、カンボジアが140万人となっている。専門家は、中国からの過剰流出を吸収する能力がなければ、企業は発展途上国市場でサプライチェーンの問題、インフラの問題、土地不足に直面する可能性があると警告する。

 

-グローバル化-

これはインドネシアの問題かもしれない。インドネシアは煩雑な官僚制度のせいで、近隣諸国に後れを取っているからだ。

しかし今、インドネシアは貿易戦争から外国投資を吸収しようとしている。

「われわれは、投資家が事業許可を得る手続きを迅速化することで、投資を容易にしようとしています」とあるインドネシア投資委員会の幹部は述べ、インフラ整備や人材育成に力を入れ、法人税減税も実施しています、と付け加える。

アナリストらは、貿易戦争の終焉が見えない中で、中国からの製造業の移転は今後も続く可能性が高く、長年定着してきた世界の貿易パターンが再定義されるだろうと指摘する。

「「米国の工場 」としての中国の支配に終止符が打たれることは間違いないでしょう」とピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるGary Hufbauer氏はAFP紙に対し述べる。米国企業や消費者にとっても、中国からの輸入品に対する関税が高いということは、平均的な米国人がナイキのスニーカーやリーバイスのジーンズに、より多くのコストをかけなければならないことを意味する。

そして、もしトランプ大統領が「アメリカを再び偉大にする 」クラリオン・コールの一環として、これらの関税を課すことで米国の製造業者を本国に呼び戻そうとしているとしたら、彼の望みは叶わないだろう。米国の産業と賃金は、中国ほど低コストの製造業には向いていない。代わりに、ベトナムのような国は、そのような仕事を獲得し続ける可能性が高い。

「もっと注文があるといいのですが。より多くの仕事と収入を得ることができます」とハノイのGarco10工場で縫製するLe Thi Huong氏は話す。

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最終更新:2019年05月31日12:02

<製造業の移動>貿易戦争により、ビジネスが 「世界の工場」から移転(前)

靴下・スニーカーから洗濯機・時計に至るまで、アジア諸国は、ブランドがより安い場所を選んで製品を製造することで対立を回避し、米中貿易戦争が製造業を恒久的に拡大することを期待している。「世界の工場 」と呼ばれる中国から、ベトナム、カンボジア、インド、インドネシアへとビジネスが拡大してきた。そして、世界の2大経済大国がお互いに報復関税を課すようになり、この変化が加速した。

米国のドナルド・トランプ大統領は今月、2000億米ドル相当の中国製品の関税を25%に引き上げ、中国政府は報復として600億米ドル相当の米国製品の関税引き上げを実施した。

「これにより人々を強制的に移動させられるでしょう」と、ベトナムのコンサルティング会社Dezan Shira & Associatesの国際ビジネスマネジャー、トレント・デービス氏は述べる。中国からの移転急増また、生産規模の拡大計画により、東南アジアおよびそれ以外の地域の製造拠点が強化されている。

カシオは米国の制裁を回避するため、時計の生産一部をタイと日本に移していると述べ、また日本のプリンタメーカーであるリコーも、一部をタイに移していると述べた。米国の大手靴メーカー、スティーブ・マデン社はカンボジアでの生産拡大を計画しており、ブルックス・ランニング、ハイアール洗濯機、そしてアディダス、プーマ、ニューバランス、フィラに販売している靴下メーカーのジャサン社もベトナムに注目している。

ベトナムへの注目は、低コストの労働力、魅力的な税制優遇措置、そして中国の類を見ないサプライチェーンに双肩することに魅力を感じている製造業者にとって、理にかなった動きだ。

「それは単に貿易戦争の結果ではなく、ベトナムに機会が多く存在するということです」とデービス氏は言う。

 

-好景気-

ベトナムの供給業者の中には、企業が米国向け輸出の約4000品目に影響するであろう新たな関税を回避しようと躍起になっているため、貿易戦争がこの傾向を加速させたと指摘する見方もある。ハノイの繁華街にあるGarco10工場では、ホリスター、ボノボ、エクスプレスといった米国ブランドのメンズシャツを大量生産している。同社によると、昨年の対米輸出は7%増加し、今年は10%増加する見込みだという。

「貿易戦争のおかげで、ベトナム経済のいくつかの部門、特に衣料部門が成長しました」と、Garco10のディレクターであるThan Duc Viet氏はAFP紙に語る。「より多くの工場を開き、生産能力を拡大したいと考えています」と彼は、アメリカのショッピングモールやデパート向けに大量の労働者がシャツを縫製する彼の工場で答えた。

米貿易統計によると、今年上半期の米国の中国からの輸入額は160億ドル近くに達し、前年同期から40%増加した。

 

(後編につづく)



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最終更新:2019年05月31日10:21

<貿易戦争>中国生産に依存する、米国の高級ファッションブランドに打撃(後)

(前編より)

 

「私は、アメリカの小売業者が、単にコストのために中国から調達することを選ぶとは思いません」と、本研究の著者であるデラウェア大学のSheng Lu准教授は述べる。

「中国は、コスト、信頼性、スピード、市場、コンプライアンスリスクなどの主要な調達要因に関して、むしろ 「バランスのとれたサプライヤー」 と見なされています。関税戦争は、中国[製物品]の価格競争力をさらに低下させるでしょうが、特に短期的には、調達地としての中国全体の競争力を根本的に変えることはないと思われます」とLu氏はインタビューで述べた。

米国政府が3000億米ドルと評価している、中国から米国への残りの輸出品のほぼすべてに最大25%の関税を課すという最新の提案には、以前の関税政策に含まれなかった多くの衣料品が含まれている。7月から実施されるこれらの関税は、米国のファッションブランドの調達戦略をさらに複雑にするだろう、とLu氏は言う。

「米国の小売業者は、トップス、ボトムス、下着などの基本的なファッションアイテムの調達注文は、中国から他の供給業者に迅速に移行させるかもしれません。ですが、アクセサリやアウターのようなより洗練された製品カテゴリーのための代替調達先はずっと少ないようです」とLu氏は続ける。

「皮肉なことに、より洗練され、より付加価値の高い製品を中国から調達することは、代替の調達先が少ないため、米国のファッションブランドや小売業者を関税戦争においてより脆弱にする可能性があります」

Lu氏は、売上と利益を最大化する手段として、ブランドが在庫レベルと調達戦略を調整するために使用するファッション産業データベース上で、米国の9万のファッション小売業者からの、3億以上のアイテムのリアルタイムの価格決定と在庫データを分析している。20178月、米政府が中国に対して不公正な貿易慣行を理由に301条調査を開始して以来、米国ブランドによる中国での新たな衣料品の受注は減少している。

ベトナムも同時期に高いコスト圧力に直面したが、中国ほどではなかった。ベトナムで製造される衣料品の平均価格は、約20米ドルから34.8米ドルに上昇した。

カンボジアとバングラデシュで製造された衣料品の価格は、依然として単価は20米ドルを下回っている。

Lu氏によると、米国と中国が相手国のアパレル・繊維製品の輸出に対して25%の追加関税を課すとしても、米国は、他の供給国からの輸入が、中国からの輸入減少よりも上回るため、国内アパレル・メーカーを支援する効果はほとんどなく、アパレル部門における米国の貿易赤字はさらに悪化するだろうという。ただ、中国メーカーは受注の減少を懸念している。

「衣料品工場については、4月と5月は輸出業者にとって通常は繁忙期なのですが、米国からの受注は少ないものでした」と深センに本拠を置く現代社会観察研究所のLiu Kaiming所長は述べた。同研究所は、中国の数百の契約製造業者の労働環境を監視している。Liu氏はまた、最近の関税引き上げを受けて、米国の衣料メーカーが、生産施設の中国からの移転を加速させる、との見通しを示した。

「米国で人気のある下着ブランドを例にとると、その衣料品の80%は香港の深センの会社によって生産されました。同社は45年前からベトナムに再進出しています。昨年は関税のため、ベトナムへの投資を急速に拡大しました。現在、ベトナム北部には4つの工場があり、生産能力の半分を占めています。関税が25%に引き上げられれば、[その生産を]迅速かつ完全に動かすことは間違いないでしょう」とLiu氏は述べた。

 

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最終更新:2019年05月17日12:04

<貿易戦争>中国生産に依存する、米国の高級ファッションブランドに打撃(前)

ある最新の調査によると、米国の高級ファッションブランドはその製造過程でますます中国に依存するようになり、貿易戦争による関税引き上げに大きな影響を受ける。

Tシャツや下着などの基本的な衣料品の輸入は、ベトナム、カンボジア、バングラデシュなどの低コストの生産拠点に容易にシフトできるが、中国はアクセサリやコートなどの高付加価値製品の生産に特化しているため、米国ブランドは関税引き上げを受け入れざるを得ないかもしれない。

あるアメリカの大学の教授の研究によると、繊維産業の多くの分野がコストの面で熾烈な競争をしているにもかかわらず、中国よりもバリューチェーンの下流に位置する他の国々は、高級品の品質においては競争できないことが示されている。他の国々は、技術的な制約のため、中国と同じ量または同じ品質で生産することができない。

この調査によると、中国の衣料品のサプライチェーンにおける締め付けは続いているが、その価格優位性は、労働コストの上昇と米国の関税率の早期引き上げによって急速に損なわれている。2018年の第2四半期では、中国で製造された衣料品の平均小売価格は25.7米ドルで、ベトナムの衣料品よりわずかに高いだけであったが、その一年後、中国のコストは倍以上になり、一着当たり69.5米ドルになった。

2019年の第1四半期末までに、米国の衣料小売業者の在庫に保管されていた中国製衣料品の数は、各衣料品の属性を追跡するための業界の識別子である在庫保管単位(SKU)としては、3分の2以上減少し8352になった。2016年初頭から20194月下旬にかけて、中国は依然として米国の小売市場における最大(193774 SKU)の衣料品供給国である。

衣料品製造のコストと品質の面で中国の主要な挑戦者とみなされているベトナムは、同時期に米国市場における中国の水準の3分の1を占めた。



(後編につづく)



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最終更新:2019年05月17日10:46

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