ベトナム:多くの地元ファッションブランドが忘れ去られる(前)
ブランドVascaraを持つGlobal Fashion社は、日本のパートナーに株の大半を売却した。この売却は、現在外国人が手中にしているベトナムファッション業界のプレーヤーのリストをさらに拡大した。しかし業界の専門家は、ベトナム企業が現在の状況で生き残り発展するためには、それは避けられない道であるとしている。
2018年、若年層労働者向けのファッションブランドHnossを立ち上げた10年後、創設者であるCo Hue Anh氏は彼女の「新構想」を公式に売却し、Con Cung、Juno、The Coffee House、King Food、Eva de Evaといったブランドを所有する新たな小売グループであるSeedcomに加わった。
「こういった流れに従わなければ、数十の店舗を傘下に持つミッドエンド・ファッションブランドは、生き残れないでしょう。ですから、Hnossは外部からの投資を受け入れ、組織的に物事を進め、成長していきます」とHue Anh氏は言う。Hue Anh氏は自身の見解を説明するとともに、その理由として、現在のビジネスの状況ではミッドエンドブランドがあまりにも多くの困難に直面していることを挙げた。
最大の障害は土地代だ。コンビニや銀行の支店との競争が激しくなったため、ホーチミン市のような大都市の店舗スペースは、2年間で3倍も高くなっている。高い賃貸料を払っても事業所を確保できない場合が多い。ホーチミン市5区Nguyen Trai通りにある7~8×12~15メートルのタウンハウスの賃貸料は、1億ベトナムドンに達しようとしている。このような法外な賃貸料が、ファッションブランドがチェーンを拡大することを難しくしている。チェーンの拡大は、ブランドの認知度を高め、顧客にアプローチし、売上のバランスさせる要因のひとつである。
一方、オンラインチャンネルのコストも上昇傾向にある。
「以前は、顧客にアプローチするのに数十ベトナムドンしかかかりませんでしたが、現在では500ベトナムドンまで、あるいは販売促進イベントのピーク時には2000~3000ベトナムドンまで必要です。一般的に、この販売チャネルの総コストが注文額の35~40%を占めています。つまり、50万ベトナムドン相当のドレスを販売するには、広告、マーケティング、配送などに20万ベトナムドン近くを費やす必要があります」とHue Anh氏は述べる。
営業費用は高騰し続けているが、他ブランドとの競争のため、製品価格をそれに合わせて引き上げるわけにはいかない。その理由は、消費者の購買行動が変化したからである。消費者は特定のブランドへのロイヤルティが薄れ、広告やプロモーションに基づいて購入する傾向があり、多すぎる選択肢に晒されている。
30歳以上のオフィス労働者を対象にしたファッションチェーンK&Kの総責任者であるLe Viet Thanh氏は、同じような見解を示しており、今日の顧客は耐久性や洗練さを重視するのではなく、デザインやスタイル、色、購入する商品が流行かどうかをより重視するようになっていると述べる。
ショッピングは今では、以前のように需要や予算によってではなく、感情や体験、ソーシャルネットワーク上の広告によって動かされている。したがって、ブランド・ロイヤルティは非常に低い。そして顧客を引き付けるために、ファッションブランドは販売促進とともに、FacebookやGoogleの広告に資金を注ぎ込まざるを得ない。
「誰もがオンラインで広告を出しているので、弊社だけが仲間はずれになることはできません。そうしないと、誰も弊社のことを認知しません。顧客の意識が高ければ高いほど、顧客が店舗を訪れる可能性は高くなります。4~5年前のマーケティング予算は収益のわずか1%でしたが、現在は7~8%です。」とThanh氏は言う。
さらに、2018年以降落ち込む気配を見せず、2倍以上となった家賃、また人件費や外注費に至るまで、その他のコストも急増している。これらすべてが純利益を大きく侵食しており、現在はわずか5~7%に留まる。起業家は、経営コストのような会計以外の費用を通じて、あるいは自身の土地を利用して、可能な限り利益をあげなければならない。「この時代を生き抜くのは大変です。こういったの要因のいずれか、あるいはすべてに対処しなければならないのであれば、きっと撤退せざるを得ないでしょう」とThanh氏は述べた。
(後編につづく)