ベトナム:Lanh My Aシルクの不確かな未来
美しく伝統的な価値を持つベトナムのLanh My Aシルクであるが、後継者不足の影響もあり、今後の見通しについては不透明なままとなっている
盛衰
最高級のシルク繊維から織り出されるLanh My Aは、ベトナム南部アンザン省のTan Chauシルク村で生産されている。
この周辺地域は、桑栽培、育蚕、Lanh My Aシルク織が盛んであった1950年代〜1960年代に栄えた。
「青年(Thanh Niên)」紙によると、 村の産物は近隣の省に売られ、カンボジアやラオス、フランス、さらにはその他ヨーロッパ諸国に輸出されたという。
しかしながら1970年代に合成繊維の人気が高まると、職人のTam Langも含めたTan Chauの村人の大半は、収入を確保するために、純シルクから合成繊維やその他の繊維へと切り替えた。
Nguyen Van Long、別名「Tam Lang」は、Lanh My Aシルクの生産に最も精通した、有名な職人の一人である。Tam Langはmac nua(シルク染色に使われる黒檀色のフルーツ)の取引に20年間、シルクの生産に40年間携わっていた。
1990年代にRoseと言う名のフランス人女性がこのユニークな布地に興味を持ち、昔のビジネスを再開するようTam Langを説得するまで、Lanh My Aシルクは放棄されたままであった。
RoseはLanh My Aシルクの品質を高めるための基準を制定し、フランスや香港、そしてその他の国に毎年輸出を行なった。
Lanh My Aの生産
Tam Langの息子であり、後継者でもあるNguyen Huu Triによると、天然のシルクの生産にはとても手間がかかり、完成には1ヶ月以上を要すると言う。
Lanh My Aは、織った後にmac nuaの果実で染色されると言う独特の製法に基づいて生産された天然のシルク生地で作られている。
手摘みされた果実はすり潰され、独特な美しい黒色となる。これが水と混ぜられ、染色に使われる。
シルクは染色の過程で何度も乾燥され、朝から晩まで45日間天日干しした後に丸められる。それを打ち固めることによって輝きが増し、丈夫になる。糊付け・軟化過程を経て、Lanh My Aは最終的な形となる。
Lanh My Aが特別とされる要因は3つあるとTriは言う。シルク100%であること、mac nuaの実を染色に用いると言うこと、そして最も難しいとされるサテン技術を用いて織られていると言うことである。
デザインの上で高まる需要を受け、Lanh My Aシルクは現在、琥珀色や灰色といった色でも提供されている。
ベトナムを代表する高価なシルクであるにも関わらず、mac nura果実や熟練の技師の減少に伴い、Lanh My Aは絶滅の危機にあるとTriは言う。
mac nuaは、摘果の1、2日後にも樹脂の状態が良い、旧暦6月から12月にかけての期間だけ入手可能である。
食物栽培のためにmac nuraの木の多くは伐採されており、Lanh My Aシルクの生産のための資源が十分にないのだとTri氏は説明した。
今後の使われ方
Lanh My Aシルクはここ数年、様々なファッションショーで紹介されている。Lanh My Aシルクの未来をビジョンとし、若手デザイナーの100以上のデザインにスポットライトを当てた「The Dreamers」コレクションもそのうちの一つである。
ローカルなショーの他にも、東京ファッションウィーク16では著名なファッションデザイナーNguyen Cong Tri氏が「No 9 Luna」コレクションで Lanh My Aシルクを採用したことで、国際的な注目を浴びている。