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ミャンマー:最低賃金のジレンマが生産性向上につながる可能性

最低賃金が現在の日給3600ミャンマーチャットから48006600ミャンマーチャット(45.2米ドル)に引き上げられることを受けて、経営者の間で懸念が広がっている。このことは80%以上の賃金上昇につながり、実現すると多くの企業が廃業する可能性があるという。

同国最大の労働組合であるミャンマー労働組合総連盟(CTUM)は、高騰する生活費をカバーするために、労働者の最低賃金を6600ミャンマーチャットにまで引き上げようと活動している。

確かにミャンマーは、アセアン諸国の中でも最低賃金水準が最も低く、カンボジア、ラオス、ベトナムの水準にさえも届かない。先月フィリピン・マニラにある国家賃金・生産性委員会が公表したアセアン諸国の賃金比較リストによると、ミャンマーの月額最低賃金は約80.28米ドルで、ラオスの110.34米ドル、カンボジアの140米ドル、ベトナムの147.47米ドルより少ない結果であった。

 

より高い賃金へ

U Thein Sein前政権が、1日8時間当たりの最低賃金を5600ミャンマーチャットにすべきとの要求に対し、20159月に3600ミャンマーチャット(2.8米ドル)に設定してから2年以上経過した。5600ミャンマーチャットの最低賃金が設定されていれば、一般的な工場労働者は月給で13万ミャンマーチャット、残業、ボーナス、その他の手当を含めて多くて19万ミャンマーチャットを得られたことになる。

現地労働者によると、ヤンゴン郊外の食費や家賃は月平均8万ミャンマーチャットにもなり、ガソリン代や衣料品などの生活必需品のコストや、教育費、医療費の価格も上昇しているという。

これを受け、多くの労働組合では最低賃金を上げるのに懸命に取り組んでいる。 政府は2月に国家最低賃金委員会を設置し、1日8時間の勤務に対し、最低賃金を40004800ミャンマーチャットにするよう奨励した。

これに対して労働組合は、1日あたり最低賃金を4800ミャンマーチャット以上にすべきとしてロビー活動を行っているが、この金額で試算すると労働者は残業なしの月額で平均12万ミャンマーチャット、残業を含めると月額平均172000ミャンマーチャットの収入を得ることができる。

CTUMの要求する1日当たり6600ミャンマーチャットでは、残業なしの月額で平均約18万ミャンマーチャットの収入を得ることができる。残業を含めれば、最大283800ミャンマーチャット(約218.3米ドル)も稼ぐことができ、生活水準が高まり、何百万人もの労働者を貧困から救うことができることになる。

 

ビジネス的に現実味なし

しかし最低賃金を、政府が推奨する1日当たり4800ミャンマーチャットという高い水準に引き上げると、多くの工場や中小企業(SME)が赤字に陥り、最終的には倒産する可能性があるということが問題となっている。ある試算によると、中小企業はミャンマー経済の80%を占めているという。

最低賃金上昇は、労働者に賃金を支払う余裕のないアパレル工場に大きなダメージを与えることになる。「平均的な地元縫製工場ではインフラや物流体制が不十分であるため、採算性が悪いのです。結果としてミャンマーでは、他のアセアン諸国よりもコストが高くなっています。」と、ミャンマー縫製業者協会(MGMA)の後援者であるU Win Aung氏は述べた。

「衣料品の生産ラインは非常に高価でビジネスによる利益が十分に得られないため、我々にはさらに高い最低賃金を支払う余裕などありません。」とLat War縫製工場のオーナーであるU Khin Maung Aye氏は言った。

彼は、電気代、輸出入コスト、輸送費など他の主要な費用項目と比較しても、賃金はアパレル産業における最大の投資となっていると指摘した。「最大の費用項目である賃金が大きく値上がりになると、我々は失業してしまう可能性があります。」と彼は言った。

 

生産性向上の圧力

最低賃金が4800ミャンマーチャット以上になると、いくつかの事業所が閉鎖となる可能性があるという警告がある一方で、現在の難局は新たなビジネスチャンスにつながる可能性があるとの意見もある。利益が圧迫されることによって、多くの工場では未熟労働者を機械や設備に置き換える動きにつながり、そのことは初期投資を必要とするものの、長期的には操業コストを下げるためである。または企業が労働者を再教育し、生産性を高めることにつながるかもしれない。

実際、最低賃金引き上げに関する議論がもち上がってから2年間で、多くの産業における工場経営者が生産プロセスの一部を自動化するために機械設備への投資を開始した。2015年に最低賃金が3600ミャンマーチャットに設定された際も、既に一部の工場では自動化を進め、未熟練労働者の数を減らし始めた。

Sein-Brand Noodle工場のオーナーであるU Sein Lwin氏はミャンマータイムズ紙に対し、いくつかの生産ラインにおいて既に労働者を機械に置き換えたと述べた。「もし最低賃金が4000ミャンマーチャットを超えて設定されれば、ほとんどの工場の利益が圧迫されるため、さらに多くの労働者を機械で代替しなければならないと考えています。」と述べた。

U Sein Lwin氏はまた、ほとんどの工場では1日8時間の勤務時間では高品質の製品を十分に生産することができために、ほとんどの労働者は少なくとも34時間の残業を余儀なくされていると続けた。

この残業代は最低賃金水準に基づいて設定されているため、最低賃金が4000ミャンマーチャット以上に引き上げられると、結果として彼の工場を含む多くの企業では人件費の高騰に苦しむことになるという。

こうした動きはあるものの、最低賃金の上昇は、特にアパレル産業において決して小さくない数の事業に影響を及ぼす見込みである。アパレル産業の特質として、依然として生産プロセスの一部に労働者が必要となっている。現在業界では30万人もの労働者が雇用されており、その大部分は未熟で教育を受けていない女性で構成されている。

「我々は多くの雇用機会を提供しています。現在の最低賃金の2倍も支払わなければならない状況となれば、閉鎖するしかないでしょう。」と彼は述べた。



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最終更新:2017年11月04日

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