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カンボジア:シェムリアップのPactics社はなぜ過分の賃金支払いを行うのか(前)

アジアの縫製工場というと、ほとんどの人が「労動搾取工場」といった言葉を頭に思い浮かべることであろう。恐ろしく低い賃金、お粗末で労働搾取的な職場環境、息が詰まるほど暑い生産ライン、安価に大量生産された製品が山と積み上げられた作業場、何時間も続く操業。また多くの人が、衣料品の真価に一抹の不愉快な感覚をもたらすような心痛むニュースを思い起こすことであろう。例えば2013年に1129人が死亡した、バングラデシュにある8階建て縫製工場Rana Plazaの崩壊事故-それはダッカにある縫製工場の火災によって117人が死亡した事故からわずか1年後に発生した。またカンボジアでは、工場内での集団卒倒事故がしばしば報じられており、2013年の靴工場崩壊事故では2人の労働者が死亡した。さらに2014年に縫製労働者がより高い賃金を求めて起こしたストライキでは、警察が抗議活動を行っていたグループに発砲し、少なくとも4人が殺害された。

Tiffany、Ray-Ban、OakleyやBurberryなどのラグジュアリーブランド向けに高級マイクロファイバーを使ったアクセサリーを製造し、シェムリアップに拠点を置く革新的な繊維会社のPacticsという会社がある。カンボジアで最も有名な観光都市であるシェムリアップ郊外の緑豊かな土地に位置し、環境保全や企業の社会的責任に熱心なこの工場では、約350人の従業員を雇用し、主にマイクロファイバー製の布や、主に世界最大のアイウェア企業であるイタリアのLuxotticaグループ向けにサングラス用ケースを生産している。Pactics社では年間およそ5000万点もの製品を生産している。

木陰の中、蓮で覆われた池の周りを扇形にとり囲んでいるPactics社の4つの建物は、高い名声を得ているStuart Cochlin氏によって設計され、いくつもの涼しげで良く風の通る中庭の周りに配置されている。この革新的なデザインが実現していることを目の当たりにする、と人々はみな驚かされる。生産がピークとなる、蒸し暑いカンボジアの日中の時間帯であっても、工場の床は冷たく快適である。巨大な天窓や窓は光を存分に「収穫」し、通気孔は換気をさらに強めている。ソーラーパネルによって蓄積された電力は夜間のLED灯のエネルギーとなり、雨水はトイレの洗浄水とするために貯水されている。「Pactics社の室温は外と比べて3~5度低くなっています。」とPactics社の創業者兼社長であるPiet Holten氏は述べた。彼は2004年に上海で同社を設立したものの、2010年にカンボジアに拠点を移し、オランダ政府から助成金75万米ドルを受け、2012年に「緑の」シェムリアップ工場を建設した。「中国は気候が冬のマイナス5度から夏には35度まで変化し、暖房や空調に多額の投資が必要であるため、とてもこのようなサステイナブルな建物を建設することはできませんでした。」と彼は言った。

Holten社長は、2010年に息子とバックパック旅行をする中でカンボジアを訪問し、シェムリアップにおける「居心地のよい感覚」と親切な人々に、すぐに魅了されたと言った。 Pactics社を上海で設立し、中国衣料品産業の生産コストが高騰していることを既に身をもって体験していたため、カンボジアでの稼動が可能かどうかを調査するために彼はプノンペンを訪問した。訪問してすぐに、彼はプノンペンの産業が多くの点で中国に類似していると感じた。そこでは多くの若い女性が、労働のために遠くの農村地帯やシェムリアップなどの町から「不慣れでよく知らない都市」に移住してきていた。

「私はこういった労働モデルが理想だと感じませんでした。そしてなぜ工場の方を人々のいるところに移設しないのか?と考えたのです。若い女性を地域社会から引き離して働かせると、その収入の半分を家族に送金すれば生活の余裕はなくなってしまいます。彼女らが家族と一緒に暮らしさえすれば、自身の収入による恩恵を受けることもできるでしょう。」

Pactics工場の建設コストは安くはなかったものの、Holten社長の考えでは既にそれは回収されているという。「すべてをコストとして見る場合、(持続可能性という)考え方などは気にしてはいられないでしょう。我々の社屋はカンボジアにある他の工場よりもはるかに高価です。私が話している典型的なタイプの工場は窓なしで、私は「オーブン」と呼んでいます。我々の建物は1平方メートル当たり250米ドルかかっていますが、こういった建物は1平方メートル当たり150米ドル程度で建てることができます。ですが、我々の建物から得られるメリットは膨大です。例えば快適な職場環境により、従業員の離職率が低くなり、生産性が向上します。それにより、すぐにそのコストを取り返すことができるのです。」と彼は述べた。「我々の職場における傷病休暇率は1%以下で、その生産性は中国と同じかそれ以上ですが、カンボジアのその他多くの工場では中国の生産性の半分程度です。これは単なる企業の社会的責任(CSR)の取り組みではなく、優れた財務投資なのです。」

Pactics社では、国際労働機関(ILO)の監視プログラムであるBetter Factoriesにより設定されたガイドラインを採用している。この工場ではまた、SA 8000とISO 9000の認定も受けている。このことは最高水準の社会コンプライアンスを達成しているということであり、カンボジアの企業では非常に珍しいことである。カンボジアにおける法律上の就労年齢は15歳以上であるが、Pactics社で働くには18歳以上であることを求めている。「従業員は製品を生かしも殺しもします。」とHolten社長は言った。「彼女らを使い捨てと見なすと、最終的には失敗という結果に終わるでしょう。」彼は生産性連動の出来高制システムを採用し、月額135米ドルの最低保証賃金以上を稼ぐよう従業員に促している。従業員は年間44日間の有給休暇を与えられており、研修やトレーニングのサポートも受けている。現在Pactics社の2名の工場労働者が、会社からの資金援助を受けて大学でエンジニアリングを学んでいる。

 

(後編につづく)


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最終更新:2017年08月03日

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