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ベトナム:繊維産業はFTA向けに仕立てられるべし(前)

2015年、ベトナムは環太平洋パートナーシップ協定(TPP)および欧州・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)の交渉を妥結したが、この二つの主要な自由貿易協定は、おそらくベトナムの経済構造を変革させていくことになるであろう。

欧州委員会のJose Manuel Barraso会長は、2015年度の経済白書公表のためにヨーロッパ商工会議所(EuroCham)のメンバーに向けてプレゼンテーションを実施する中で、「ベトナムは東南アジアの中で、GDPにおける輸出依存度が最も高い国の一つである」と指摘して、「TPPやEVFTAを通じた先進国との自由貿易は、ベトナムの新興経済に大きな発展をもたらすだろう」と述べた。

これまでFTAの効果について多くが語られてきたが、多くの予想はベトナム経済に対する将来的なインパクトについてのものであり、多くのアナリストは自由貿易協定の最大の受益者としてベトナムを捉えている。Bloomberg Businessの調査員らは、自由貿易協定発効から10年以内に、輸出が28%も増加すると予測している。

農業分野とともにアパレル産業は、輸出主導型経済によりベトナムが頭角を現すのに大きく貢献してきた。 2014年時点でアパレル産業は、ベトナムのGDPの12%以上を生み出している。アパレル製品は、ベトナム経済にとっておそらく最もよく目にされる代表産業であり、米国、欧州、日本や韓国など他のアジア諸国の市場において現在広く流通している。

ドイツとスペインのアパレル輸出が合わせて10億米ドルのところ、ベトナムは既に単独で100億米ドル相当もの繊維・衣料品を米国へ輸出しており、その額はベトナムアパレル産業の総輸出額の50%を占めている。TPPが完全に発効した際には、米国との関税が現在の16~17%からゼロに削減され、またEU諸国との関税もEVFTA発効7年以内に12%からゼロになるため、今後この金額はさらに増加する可能性が高い。このように計算上では、ベトナムの輸出業者はFTAから多くの利益を得るとされるが、問題は彼らが実際どのようにこれらのFTAによるビジネスチャンスから恩恵を受けるのかということである。

ベトナムのアパレル産業に積極的に参画している企業や人々の数は、それぞれ6000社と250万人以上と多いが、これらのうち約70%が輸出向けに生地から衣服を生産する工程を担う「裁断-縫製-仕上げ」(CMT)サービスなど、労働集約的で付加価値の低い作業に従事している。この作業モデルにおいて、綿、糸や繊維などの原材料は中国、韓国、インド、台湾などの他国から輸入されており、現在ベトナムでは、アパレル生産に使用する原材料の65%以上が輸入に頼っている。この「裁断と縫製」工程という労働集約的な性質の仕事は、廉価な人件費による多くの労働力を活用し、ベトナムを先進国向けのアパレル工場に変貌させることによって、かつてはこの国に大きなメリットをもたらした。

ベトナム繊維協会(Vitas)のDang Phuong Dung副会長は、ベトナムが発展するために必要なのは、多様化と拡張である、と指摘した。「ベトナムの繊維・アパレル産業の付加価値は非常に低いものです。グローバルサプライチェーンにおいてベトナムは、重要な役割を担っていません。ベトナムが他国を凌いでいる唯一の優位性は、安価な労働力だけなのです。」 この優位性は当面機能するかもしれないが、バングラデシュやミャンマーなどアセアン地域の他国もまた、低い人件費によって外国投資を誘致している。

ベトナムでは現在、原材料工程について最小限の機能しか備えていないため、アパレル産業は輸入に大きく依存しており、バリューチェーン上のこの機能の開発で大きく出遅れている。また衣料品生産において重要な付加価値の源泉であり、バリューチェーン最初の工程となる衣料品デザインは、その多くがベトナムからではなく、国際的なプレイヤーから提供されている。ベトナムのアパレル企業は、TPPによって供されるビジネスチャンスをつかみ、衣料品生産工程におけるより重要で、利益の多い工程を取り込むためには、こうした空白部分に対処する必要がある。

 

投資規模 投資国
プロジェクト概要

2億7400万米ドル(第1フェーズ)

10億米ドル
(第2フェーズ)
台湾 ビンズン省は台湾のFar Easternグループのアパレル生産設備の開発計画に対し、投資証書を授与した。この工場では、ベトナムのバリューチェーンにおける空白を埋めるため、アパレルのサポート製品を生産する予定である。
3億米ドル インド インド政府はベトナムとの間のパートナーシップを発展させるため、ホーチミン市近郊に3億米ドルを投じて工業団地を設立する計画を発表した。ベトナムでは近年需要に応えるだけの綿を生産することができていないが、インドではベトナムのアパレル部門を支えるために、多くの綿を輸出している。
未開示 香港 2015年末に公表されたところによると、香港のTexhong Textileグループは世界最大級の二層構造糸のメーカーであるが、その拡張計画の一環として、ベトナムに繊維産業拠点を設立する予定としている。


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最終更新:2016年04月19日

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