インドシナニュース

ベトナム:繊維部門は課題が山積み(後)

(前編より)

 

取組み課題と改善ポイント

ベトナムの繊維産業にとって、その生産構造を改善し、世界的に優位なポジションに留まるための改善点はサプライチェーンにあり、労働生産性、供給リードタイムの短縮、デリバリー品質の維持、そして世界需要の中心である欧州や米国におけるデリバリー基準に適合するよう、労働慣行を向上させるといった項目にポイントがある。

 

労働生産性

労働はコスト競争力の唯一最大の源であり、それはまた、これらの国におけるビジネス繁栄の背後にある最大の理由であるが、今後次第に失われていくことが予想される。即ち賃金が上昇することにより、次第にこのコスト競争力の弱体化が、他国からの優位性を失わせることになる。中国はかつて、労働賃金のコスト競争力の追い風により、輸出と生産が数倍に拡大した例である。現在中国の労働賃金は、月額約100〜110米ドルのベトナムに対し、月額200米ドル近くまで上昇した。インドの賃金はベトナムに近く、バングラデシュはなおも低水準のままである。景気停滞と優良な産業カテゴリの縮小により、中国産業は労働生産性の向上に焦点を移した。実際に中国の労働生産性は飛躍的に改善しており、その速度は、コスト競争力の低下と共にスローダウンしているものの、ビジネスがなおも中国に留まっている理由となっている。

研究によると、一旦TPPが発効すると、新たな貿易関係によって、ベトナムの繊維・衣料品産業に600万人の追加の雇用が創出される、としている。しかしそのことはまた、労働賃金が12~15%増加することにもつながる。結果として、ベトナムはさらなる強みを身につけるため、近代的な工場管理と生産工学の実践技術に投資する必要がある。生産工学、リーン生産方式など、特に組織設計によって、大幅に労働生産性を高めることが求められる。このような技術は、世界的にも労働生産性を20〜25%上昇させるなど大幅な改善をもたらしている。

 

供給リードタイム

供給リードタイムは、もう一つの大きな差別化要因である:上流工程をコントロールできる者は、ベトナムにおいてクライアントからの発注を獲得する際、最初の候補となり得る。この上流工程のコントロールを得るには、後方統合(開拓する調達拠点にどの程度近接しているかによりその難易度が上がる)か、代わりに適切な需要管理、計画、調達プロセスを導入する必要がある。コスト面での利点は受注の二次的要因であり、リードタイムや適時にデリバリーする能力が受注の決め手となることがしばしば起きている。インドや中国の大きな企業は割増価格で受注し、その余力を供給リードタイムの管理に利用しているような例もある。

ベトナムでは工場や機械設備を別にすると、重要なインフラ基盤として物流インフラが挙げられる。ベトナムの物流インフラの現状は必ずしも満足いくものではなく、受注からFOB配送ポイントまでの購買・配送に係るリードタイムに多くの時間を必要とし、しばしば80日もかかる場合がある。他国企業では、40〜50日のリードタイムで稼動している。このベトナムの状況は、地元調達オプションの開拓を通して改善でき、それによって約20日もリードタイムを短縮することが可能と考えられる。またさらに、製造リードタイムを削減することにより、受注からデリバリーまでのサイクルタイムを改善する余地もある。インドや中国の大手企業は、統合計画プロセスと生産工学の実践を通じて、30~40%もの製造リードタイムを削減することに成功した。中国の1日に対し、ベトナムでは通常5日かかる通関手続きなど、その他のプロセスについても、競争力を高めるために合理化する余地がある。

 

社会的責任(CSR)と労働慣行

企業の社会的責任(CSR)と公正な労働慣行に対する問題が、近年主要な関心事となっている。最近バングラデシュで発生した建物崩壊や火災による労働者の死亡事故は、世界の小売リーダー企業に産業規格を精査・強化するよう、その意識を向けさせた。

従業員の福利厚生に対する投資、適切な労働規制の策定、そしてCSRの重視は、今後ビジネスを進める上で必須となる。ベトナムの繊維産業は、今後数年間で多様な成長の可能性を秘めている。しかしこれを現実のものにするためには、長期的な製品および市場戦略を策定する必要がある。顧客に対し短納期で高品質のデリバリーを可能とするために、適切なプロセスとシステムが、必要なインフラ基盤と共に導入される必要がある。また繊維業界においては、労働力の効果的な稼動に向けて取り組み、低い人件費を売りにした工場、という世界共通の認識から脱却する必要がある。リーン生産のような近代的な工程管理手法に従い、サプライチェーンを包括的に再検討することは、組織の業績を次のレベルに引き上げ、ベトナムを世界の衣料品大国にする可能性をもたらすであろう。

*ここで著者によって表明された見解は、必ずしもKPMG社ベトナムの見解や意見を示すものではない。


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最終更新:2015年12月07日

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