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ベトナム:TPPの原糸基準の原則が及ぼす多大な影響

米国が主導権を握る環太平洋経済連携協定(TPP)は現在も交渉が進められている。交渉参加国は12カ国。提案事項の中で重要なカギを握るのが「原糸基準」の原則である。原糸基準の原則とは、TPPの非課税措置を受けるには、TPP加盟国産の原糸で製造した繊維しか使用できないというものである。同原則の目的は、TPPの貿易特恵を受けられるのは加盟国だけの特権とし、中国のような非加盟国がそれを享受しないようにすることにある。だが一方で同原則は、例えばベトナムのような加盟国にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

TPPの実現によって、その貿易圏は経済生産高が28兆ドルという一大経済圏となり、結果として、世界の経済生産高の約39%を支配することになる。TPPが成功を収めれば、関税撤廃は今後、加盟国間で取引される約2兆ドル分の物品やサービスに適用されることになる。従ってTPPの実施によってベトナムは、例えば巨大市場を持つ国々で関税を大幅に削減できるなど大きなメリットを受けることになる。

原糸基準の原則は、ベトナムのように現在、世界的に主要なアパレル生産拠点となっている国々に対しては、深刻な影響を及ぼす可能性がある。こうした国々の工場では、中国製の繊維を使って製品を製造することが多い。だがこれまでのところ中国はTPPに参加していない。実際ベトナムでは、繊維企業の約85%が海外の提携企業から生産を請け負っている。よってベトナムが今後、例えば米市場で関税の引き下げを受けるなどTPPの恩恵を受けるためには、国内の繊維産業を発展させるか、あるいはTPP加盟国からしか繊維を調達しないよう制約を設けるかなどの方針を取らなければならない。

ベトナムは現在、TPPからこの「原糸基準」の原則を取り下げるか、または実施を延期するよう働きかけている。他の加盟国もその多くが、ベトナムを支持している。ベトナムはこれまでにも別の取組を行ってきたが、その取組からは原糸基準に同意する可能性があることや、TPPに対してはこれまで極めて一貫した支援を表明してきたことなどが窺える。というのも、アパレル製品以外にもベトナム製の多くの製品が今後、世界最大といわれる国々の市場にアクセスできるからだ。従って原糸基準の原則は、TPPの締結に当たってそれほど致命的な障害ではないのかもしれない。米通商代表部(USTR)もまた、同原則の要求を撤回するつもりはないと述べている。ベトナム企業の多くはすでに、自社で繊維製造事業を立ち上げたり、既存の事業を拡大したりしている。交渉が最終的にまとまったときに、遅れを取らないようにするためだ。こうした主な企業には、Century Synthetic Fiber Corporation(CSFC)社やThanh Cong(TCM)株式会社、ベトナム繊維公団(Vinatex)などが挙げられる。

またベトナム商工省はこれまで、国内の繊維製造産業の競争力をさらに強化しようと、ポリエステル短繊維(PSF)に対して2%の輸入税を課すよう提案してきた。輸入PSFは現在のところ課税対象となっていない。

原糸基準の原則によって、ベトナムがデメリットを受ける可能性がある一方で、米繊維メーカーらは同原則の導入に意欲的だ。というのも、同原則が導入されれば、中国やベトナムによる米市場への参入を抑制できると考えているからだ。米繊維メーカーらはまた、同原則の採用で、米繊維産業が対ベトナム投資にますます積極的になるのではないかと懸念している。

米国が「原糸基準」の原則を推進するのは今回が初めてではない。中米自由貿易協定(CAFTA)の締結に際しても、米国は、原糸、繊維、縫糸、および最終製品である衣料品の生産については、米国あるいは同協定に加盟する中米・カリブ海諸国(6カ国)のいずれかで製造しなければならないと主張した。メーカーらはこれまで、同原則を、世界市場で競争力を手にする上での強い武器だと考えてきた。よってTPPは米メーカーの多くから多大な支持を得ている。

原糸基準の原則を取り下げるよう主張する中で、ベトナムのような国々はウォルマートやターゲットのような米小売大手と提携して、同原則を緩和するよう要求している。

一方でUSTRには、この要求をやや受け入れようとする姿勢が窺える。というのも、最近公表された「目的の要約」に「供給不足」についての規定が盛り込まれているからだ。この規定によると今後、「米国あるいは他のTPP加盟国において市販で手に入らない」原材料については「非加盟国から調達することができ、かつ加盟国でのアパレル製造に使用することができる。またこれによって税制優遇の特権を失うことはない」とされている。

USTRは、規定の緩和には上限があるとしているが、一方でこれにより中国にチャンスを与えることになるのではないかと批判する者もいる。中国製品をベトナムに輸入し、それを米国に輸出することになれば、結果として中国が、いかなる制約も受けずにTPPの恩恵だけを受けられるようになる可能性があるからだ。この問題は、他の物品に課された原産地規則ですでに確認されている。例えば、ある製品の製造において、海外で製造される部分が65%までであればその製品は国産とみなされるというような問題である。こうした批判に対してUSTRは、供給不足についての規定では、TPP非加盟国が加盟国を通じて自国の製品の利益を得ることはできないという考えを強く主張している。

一方で企業は賢明で、あらゆる事態に備えて計画を立て始めており、TPPを最大限に活用しようとしている。



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最終更新:2015年05月20日

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