インドシナニュース

中国からベトナムへ、低付加価値労働移動の流れ

こんな諺がある、「抵抗のない方へ流れていくと川は曲がりくねった川になる」。この「川は曲がりくねった川になる」の部分を「労働力は安価になる」に置き換えると、極めて信頼性の高い経済の経験則になる。

繊維・縫製産業は常に「最も抵抗の少ない道」を求めてきた。同産業はかつて米国ニューイングランドの経済を支えていたが、1920年代に入り、労働者が賃金の引き上げを求めてストライキを起こし始めると、まだ人々の考え方に柔軟性の残る南へと移動した。

米国南部では長い間繁栄に恵まれ、1960年頃には、ノースカロライナ州だけでも50万5000人もの縫製労働者がいたという。

だがその頃、米国南部の縫製労働者らは基準を下回る賃金や労働条件に不満を持ち始め、労働組合を結成したりストライキを起こしたりしていた。これに見切りを付けた工場主らは工場を閉鎖し、中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、メキシコなど発展途上国へと拠点を移した。これらの国々では、人々は貧困にあえぎ、仕事の内容や賃金の額にかかわらず職を求めていた。

ジョージア、ノースカロライナ、テネシー、アラバマ、バージニアなどの各州では、2002~12年の間に、平均59%の縫製労働者が職を失った。かつてこれらの州で行われていた縫製業は、そのほとんどが中国へと移動した。

だが近年、川の流れが再び変わりつつある。中国での労働力はもはや安価ではなく、「最も抵抗の少ない道」は現在、ベトナムへと続いている。ベトナムの縫製労働者の賃金は、中国の38%だといわれている。

米国商務省国際貿易局(ITA)のデータによると、ベトナム繊維・縫製産業の対米輸出額は2012年、77億ドルを達成し、13年には88億ドル、今年1~9月には98億ドルにまで達した。

ベトナムはまた、米国の靴・履物市場にも参入している。靴やブーツ、スリッパ、サンダルなどの対米輸出額は2008年、12億ドルとなり、13年には29億ドルとなった。

こうした状況下、米国縫製産業では、ベトナムとの貿易協定を阻止したい考えだ。協定を結べば、米国製造業が海外移転を余儀なくされる可能性があるからだ。だがこれまでのところ、両国で結ばれている貿易協定はない。

 

<いまだ交渉中の貿易協定>

環太平洋経済連携協定(TPP)では、米国を始めとする計11カ国、およびベトナムが現在交渉に参加している。中国は、依然として繊維・縫製・履物の各産業をリードしているが、交渉には参加していない。

繊維・衣料製品に対する米国関税は現在0.8~37.5%だが、TPPが締結されれば、これらの税率は加盟国に対して撤廃されるか、ほぼ0%に近い税率となる。

こうした状況を鑑みると、米国縫製産業が、締結に反対するのも無理はない。締結後には、これまで以上に多くのランニング・シューズやカプリパンツ、スウェット・シャツなどの製品が、せきを切ったように、ベトナムから輸入されることになるだろう。

 

<交渉の背景>

全米繊維団体協議会(NCTO)によれば、米国繊維・縫製産業では約37万3000人の労働者が働いているが、そのうち生産に従事しているのはわずか1万2000人だという。

一方、米国靴・履物産業の労働者は約30万人だが、生産に従事しているのはわずか3000~7500人である。

だが実際のところ、こうした数字は米国履物流通小売業者協会(FDRA)の1職員による推定に過ぎず、確かなデータは存在していない。産業従事者の減少があまりにも激しく、米国労働局ももはや人数の把握さえしようとしていないからである。

これらの産業の一体何がいけなかったのだろうか。わずかだが、残った労働者のために何か対策を取ろうとはしないのか。

対策は取っている。だが米国繊維・縫製・履物産業は近年、専門的な業務に従事しているため、海外への移転が難しくなっているのだ。

米国縫製産業ではもはや、シャツやスカートの大量生産は行っていない。生産よりもむしろ、医療用機器の応用、省エネ対策、スポーツでのけがの予防や、その他現代に必要とされる業務に特化している。

これらの職業は先端技術職で、従事する者にも高度な技術が必要とされる。

ベトナムの繊維・履物産業では現在、労働者が単純労働を行っているが、いずれ賃金の引き上げを要求し、今よりも高い賃金を手にする日が来るだろう。そのとき、ベトナムを生産拠点としてきた米国企業は、人々が職を求めただも同然で働く別の国へと再び拠点を移すのである。

今後TPPを締結したとしても、その状況は変わらないだろう。

 

 



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最終更新:2014年12月06日

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