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カンボジア:政府、縫製産業の最低賃金を128ドルに決定

カンボジア労働省は12日、縫製労働者の月額最低賃金を128ドルに設定すると発表した。昨年12月の賃金改定以降、縫製産業の足かせとなってきた大規模な労働デモが、これで沈静化に向かうことが期待されている。一方こうした状況下でもなお同産業は、55億ドルの売上高を誇り競争力を維持している。

新たな最低賃金は、政府、労組および工場使用者の3者交渉を受けて発表されたもの。同3者交渉は、現行の最低賃金100ドルからの上げ幅について3者すべてが異なった見解を示すなか、数カ月にわたって難航し続けた。

そして12日午後、Ith Sam Heng労働大臣が新たな賃金について発表。政府、使用者、労働者の代表28名から成る同省労働諮問委員会(LAC)が、新賃金を123ドルとする投票が行われたわずか数時間後のことだった。

労働大臣は署名済みの政府布告で、「2015年の縫製・製靴産業で働く労働者の月額最低賃金は128ドルに設定」と述べた。また同布告には「新賃金制度は、一部の労働者を除く全労働者に対して1月1日から施行されるものとする。謹慎期間にある労働者においては、その期間が終了するまで123ドルの賃金とする」と記載されている。

LACを構成する7つの労組のうち2つの非政府系労組は、近日中に組合員と会合を開き、今回の賃金案を受け入れるかどうかについて協議すると述べた。残りの5つの労組に関しては、政府と癒着があると広く考えられている。

同国最大の非政府系労組、カンボジア・アパレル労働者民主連盟(CCAWDU)のAth Thorn会長は、会合について「来週行う予定だ」と話した。

労働省は昨年、当時労組が要求していた160ドルという最低賃金案を拒絶し、代わりに95ドルに決定する旨を発表した。これを受けCCAWDUは、その後全国規模で広がった労働デモの開始を支援。昨年12月、縫製産業に一時的な停滞をもたらした。

同省はその後すぐに100ドルへの引き上げを行ったが、すでに広がったストライキやデモ活動を鎮めることはできなかった。そして1月3日、火炎瓶などで攻撃するデモ隊に治安部隊が発砲し「血の休戦」となった。これにより少なくとも5人の縫製労働者が死亡し、多数が負傷した。

Thorn会長は、こうしたデモ活動を繰り返すつもりはないが、大規模なデモが2度と起きないとも言いきれないとし、「決定に合意しない労働者がいる限り、抗議活動は続くだろう」と述べた。

もう一方の非政府系労組である、カンボジア全国独立繊維労働組合連盟(NIFTUC)のKen Chheng Lang副会長によれば、同組合でも来週会合を開き、新たな賃金額について話し合いを行うという。

CCAWDUとNIFTUCの両労組はこれまで、最低賃金を大幅に引き上げるよう要求してきた。ほとんどの縫製労働者にとって、残業手当や毎月の特別手当、食費や交通費などの特別手当を加えても、100ドルという賃金額では基本的な生活を送るのは難しい。

こうした状況に伴い、先の2つの労組を含む8つの労組が急先鋒に立ち、要求額の変更を繰り返していた。まず昨年12月、160ドルへの引き上げを要求し、その後すぐに177ドルへと変更した。それから150ドルへと徐々に引き下げられ、最後には140ドルとなった。12日の投票で140ドルに投票されたのは、わずか2票だったと伝えられている。

政府は最近の交渉で、最低賃金の額は首都プノンペンでの「貧困ライン」を上回る額でなければならないとし、それを月120ドルとした。

カンボジアの衣料製造工場および製靴工場のほとんどが所属している、カンボジア衣料製造協会(GMAC)は、最低賃金を110ドルに設定するよう強く要求し、110ドルを超えた場合、工場によっては閉鎖を迫られる可能性もあることを主張していた。

新賃金の発表後、GMACは労働省の決定について「非常に遺憾」と述べた。

新賃金では、特別手当やその他諸手当を加えると、同産業が支払う1人当たりの給与は月145ドルにまで上昇する。この額はベトナムの給与額とほぼ同等だが、労働者の生産性ではベトナムの方が格段に高い。

GMACは「給与の支払額が急激に上がれば、GMACに所属している工場はその多くが、深刻な生存の危機に立たされることになるだろう。特に経営面で問題を抱えている工場や受注量の少ない工場で、この傾向が強くなる可能性がある」と述べた。

LACに所属する工場代表のNang Sothy委員は、新賃金の導入によって、少なくとも30件の工場が閉鎖に追い込まれ、5万人の労働者が解雇される可能性があると指摘した。同産業で働く労働者の数は全体で約60万人とされており、その大部分が若い女性だ。

労働省広報担当官のHeng Suor氏の話では、使用者はこの決定に不満を感じているが、一方で労働者にとっては喜ばしい結果になったのではないかという。

Suor氏は「1ドルや2ドル、5ドルといったわずかな額の引き上げでさえ、労働者にとっては大きなもの」と述べ、「今回の引き上げによって、労働者の不満は緩和されるだろう。生活水準が上がり、生産性の向上にもつながるはず」と続けた。

だが米労働団体Solidarity Centerで地域部長を務めるDave Welsh氏は、新たな賃金額について、使用者と労働者の双方を失望させる可能性があるとし、今回の決定がどのような結果になるのかは「予測できない」とした。また「128ドルでは、誰の不満も解消されないだろう」と述べた。

Welsh氏は交渉の間、労組らと協力し、新たな取り決めが3方すべてにとって納得のいくものになるよう立ち回った。同氏の話では、カンボジアの非政府系労組らが今回の決定にどのような反応を示すのかは分からないが、彼らが望んでいた額をはるかに下回る額だったことは確かだという。そして「期待はずれの結果に、多くの人ががっかりするだろう」と述べた。

さらに賃金の取り決めを透明化するという約束を、政府と工場側が「破った」ことについて非難し、投票で結託していた可能性があることを指摘した。そして「公正な投票でないことはおおむね明らか」と付け加えた。

一方でWelsh氏は、12日の決定が労働省の最終決定ではないことに望みをかけている。同氏は「変更するだけの時間的余裕はまだある」とし、昨年12月に行われた「引き上げ案の変更」を引き合いに出しながら、「また同じように変更すれば良いだけだ」と述べた。

 

 



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最終更新:2014年11月17日

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