インドシナニュース

ミャンマーに見る女性労働者の活躍推進(前)

今年8月末、約700人の若い女性労働者らが、ヤンゴン北部のHlaing Tharyar工業団地内にあるマスター・スポーツ靴工場ゲート前に集結していた。

この2カ月間、彼女たちは、鍵のかかったゲートの向こうにあるメタル製の倉庫をずっと見張っていた。ゲートの内側は、2カ月前まで彼女たちの職場だった。

こうしたデモ活動のなか、スコールや断続的な日光から身を守るために作った、竹と防水シートのビニールハウスにしゃがみ込む者もいれば、野菜や香草を売り歩く者と値切り交渉を始める者もいた。野菜売りたちは、労働者が昼夜を問わずデモ活動を続ける姿を目にし、ここぞとばかりに新たなビジネス・チャンスを見出したのだ。

さらには、停車したままのさびた中国系のバスで、ビニール張りの椅子にじっと腰かける者もいた。バスは、これまで工員の送り迎えに使われていたものである。ある女性は必要な限りデモを続けると話した。

テイン・セイン大統領による革新政党が、軍事政権時代には認められていなかった、労働組合に対する厳格な禁止令を撤廃してから約2年が経った。ミャンマーでは、女性が圧倒的に多い産業において、その労働力となる何千人もの女性が、職場への抗議やデモ活動、労働条件変更の要求などを求めて、労働環境の改善に乗り出している。

同国労働省によれば、労働組合の結成が認められて以降ミャンマーでは959もの基本労働団体が設立されたという。だが一方で、労働登録局の記録では、2012~14年にかけて行われた労働デモが447件にも上っている。

これまで男性優位の家父長制を基本原理としてきたミャンマーでは、女性労働者が増加したことで、それによって生まれた新たな労働勢力が、女性に社会面や経済面での権力を与えたかのように見える。

ミャンマー衣料品製造組合(MGMA)によると、同国の衣料産業は、労働人口の約9割が女性だという。また海外のアパレル・メーカーの投資によって、将来的な産業の拡大が見込まれている。さらに労働登録局は、同産業がヤンゴンの工業生産高全体の約44%を占めていると伝えた。

MGMAでは、国内の衣料品工場で働く労働者を約20万人と推定している。典型的な工員の例として挙げられるのは、女性、平均24歳、週休1日、1日13時間労働、月給約80ドルといった点であることが、労働相談センターの調べで分かっている。

工場のオーナーらは、政治団体の88 Generation Peace and Open Societyや、最大野党の国民民主連盟(NLD)といった活動家グループに対して、デモを動員したり労組を結成したとして非難しており、一方で2015年の選挙が近づくにつれ、労働争議が頻発するのではないかと懸念している。

ミャンマー投資委員会は、同国が徐々に対外開放を開始した2010年以降、海外投資は毎年およそ5倍の割合で増加してきたと話す。安価な労働力を求める、韓国、香港、台湾などの衣料品工場オーナーらによって、ミャンマーへの投資はますます増加するものと期待されている。だが例えば米小売大手のGAPなど、欧米のアパレル・ブランドに関しては、委託する工場の労働環境について非常に敏感になっているのが現状だ。今後、同産業へ投資を呼び込むには、新たに制定された労働法を再度改正し施行することが重要な要素になるだろう。

 

労働権の獲得を目指す教育

今年6月26日の夕刻、マスター・スポーツ靴工場のオーナーは、夜になって従業員が帰宅するのを待っていた。その後鈍い色をした重い工場ゲートに鍵をかけ、飛行機に乗って故郷の韓国へ帰国した。オーナーは、従業員に対して何も告げていなかった。給料も支払っておらず、退職金などの手当について話し合うこともなかった。717人の女性従業員らは即座に、給料や各種手当の支払いを求めた。工場の外や韓国大使館前、首都ネピドーの労働省周辺などでデモ活動を実施し、ミャンマー政府にも支援を求めた。

2カ月後、ヤンゴンのJunction Zawana近くにある、ミャンマーで最も有力な活動家グループ、88 Generation Peace and Open Societyのコンクリート製のオフィスの隅で、質素な木の机の前に座る2人の若い工員がいた。23歳のZar Zar Theintさんと、25歳のPhyu Phyu Soeさんだ。2人はマスター・スポーツ社に対する抗議デモのリーダーを務めており、労組法や雇用法などを学ぶために、同グループを頼ってきたのだ。

頭上から2人を見守っているのは、入り口にそびえる「88」を模った巨大な金属の彫刻。そして2人の間には、小柄なMar Mar Oo女史が立っている。Mar Mar Oo女史はエレガントな白いブラウスに身を包み、ミャンマーの国の形をしたブローチを首の位置に留めている。髪は耳の長さに切った黒髪のショートヘアで、ハシバミ色の瞳をしている。ハキハキと話す一方で、一緒にいる人を和やかな気分にさせる。だがこうした雰囲気とは裏腹に、彼女は長年、労働条件の改善を訴え続けている。そして「労働組織はあっても、まだ十分な力を発揮しているとは言えません。労働者に法律や権利の知識がないため、先に進めずにいるのです」と話した。

Mar Mar Oo女史は、労働者が、工場オーナーや弁護士、各々の選挙区を代表する議員らと連携し、すべての人にとって公平で生産的な労働環境を構築することが望ましいとしている。現時点で労働者の立場は不利である。と言うのも、彼らは法律に疎く、そのような相手は雇用する側にとって利用しやすいからだ。Mar Mar Oo女史は「現状で労働条件を改善するのは困難です。問題が起きても一般的な問題にしか対処できません」と続けた。

88 Generationが結成しようとしているのは、全国的な労働組織である。小規模の組織をいくつも立ち上げ、社会的なネットワークを利用して互いを連携させる計画だ。彼らはまた国際労働機関(ILO)ともつながりがあり、衣料産業で働く全国の女性労働者を対象に、労働権に関する教育を提供している。

 

(後編に続く)



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最終更新:2014年10月24日

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