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カンボジア縫製労働者、英国視察で適正賃金の実現に意欲

カンボジアの縫製産業で働くEam Rinさんは先週、オックスフォード通りにある、世界有数のスポーツ用品メーカー、アディダスのフラッグシップ店を訪れた。オックスフォード通りとは、ロンドン中心部にあるヨーロッパで最も人通りが多い通りだ。

数年前に夫を亡くしたRinさんが5人の子供たちをカンボジアに残して旅行に出たのは、今回が初めてのこと。遠く離れた異国の地で彼女が目にしたものは、普段の生活とはまったく異なる世界だった。

現在46歳のRinさんが家族と住んでいるのは、首都プノンペンにある小さな1ベッドルームのアパート。職場はCanadia工業団地内の縫製工場で、自宅からすぐの距離にある。工場ではアディダスやその他有名ブランドの衣料品製造に携わっており、給料は同産業の最低賃金である月100ドルだ。

彼女はアディダスで、店内の陳列棚に並ぶ商品の値札を見て目を疑った。「アディダスの服が、海外でこんなにも高いとは思いもよりませんでした。商品によっては、私たちの月給よりも高いのです」と話す。

Rinさんは、英「Labor Behind the Label(労働者の権利保護団体)」の招待でロンドンを訪れ、今月17日開催の労働キャンペーン「グローバル・デイ・オブ・アクション」に参加した。労働組合の国際組織とカンボジア労組が実施した同キャンペーンでは、最低賃金を177ドルにまで引き上げるよう要求した。

カンボジアでは昨年、労働者らによる抗議デモが相次いだ。政府が新たに定めた最低賃金が、労組の要求額(160ドル)を大幅に下回っていたからだ。カンボジア政府は軍警察を動員して武力による鎮圧を行ったが、投石などで抵抗したデモ隊に発砲したことで少なくとも5人が死亡し、多数が負傷した。

カンボジア・アパレル民主組合連盟(CCAWDU)のメンバーの1人で、抗議活動にも参加したRinさんは英国の消費者に対して「誰がどのような思いで製品を作っているのか知って欲しい」と語った。また「キャンペーンでは通行人に呼びかけながらビラを配りましたが、皆さん私たちの要求を支持してくれました。自分たちの服がカンボジア製ということを知っている人は多いのですが、その労働環境までは知らなかったようです」と話す。

Labor Behind the Label で広報・アウトリーチ支援担当のHannah Smithマネジャーによれば、Rinさんはいくつかの学校を訪問し、学生を相手にカンボジアの縫製産業労働者の生活について講演した。講演後「自分たちが着ている服に対して考え方は変わったか」と訊ねたところ、10歳の子供たちのクラスでは40名の生徒全員が手を挙げたという。

Rinさんは盂蘭盆(カンボジアのお盆)を家族と祝うために24日、実家のあるKompong Cham州に戻った。そこでカンボジアの縫製産業労働者が今後不当な扱いを受けないようにするには、どこに責任の所在を求めるべきかについて考えた。

Rinさんは「カンボジアに進出し投資を行う場合、外国企業は関係各署に賄賂を提供しなければなりません。これが悪影響となり、誠実な企業でさえも経費削減を余儀なくされるのです。そして最終的にしわ寄せが来るのは工員の給料になります」と話す。

また政府が目指しているのは労働者の生活向上ではなくむしろ労働者の権利を抑制することで、現在行われている交渉でも何も変わることはないだろうとの見方を示した。

Rinさんがロンドンに到着したその日プノンペン地方裁判所は、CCAWDUのAth Thorn代表が今年1月Veng Sreng通りで起きた暴力的なデモ行為に関与した疑いがあるとして、裁判所の監視の下、今後のデモ活動への参加や他労組トップらとの交流を禁じた。

Rinさんは「こうした判決は英国にはあり得ない」とし、「カンボジアには労働者に対する正義というものがありません。政府が労働者の権利を侵害するのは日常茶飯事です。しかし英国ではわれわれの権利を妨害する人はいませんし、抗議活動は労働者の権利として尊重されています」と話す。

カンボジアの縫製労働者と、これら労働者が作った衣服を身に着ける人々との生活に大きな隔たりを感じたRinさんは、適正賃金を実現するよう以前にも増して戦う姿勢を示した。

さらに「家畜みたいな生活はもうまっぴらです。賃金上昇のために必要なことは何でもする覚悟でいます。お分かりにならないかと思いますが、われわれにとって英国は天国のようにさえ感じます。それに引き換えカンボジアは地獄のようなところです」と続けた。

 

 



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最終更新:2014年09月29日

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