ベトナムビジネス体験記

第二十四回ラインスタッフは力持ち

HCMCの家電専門店でK社という会社がある。

弊地では、家電販売の代表選手的な存在で、最近では、HCMCに留まらず、地方や北部にも進出している。

私に限らず、多く人たちがテレビやエアコン、冷蔵庫といった家電製品を揃えるときにまずはK社の店に訪れる。私も昔から利用している。

店で商品を買い、配達、取付まで頼むと、その日のうちに配達して、取付してくれる。やってくるスタッフはいつも決まって一人で、そのスタッフが何から何までやって帰っていくのである。

先日、家のエアコンがおかしくなって、買い替えた時のこと。

とはいえ、我が家はアパートの3階、日本風に言えば4階である。重い荷を運んで、下まで降りるのは容易ではない。最初、一人で大丈夫だよ、と彼は平気な顔で言っていただが、いざ担いで運ぼうとする姿を見ると、耐え切れそうにない。不憫に思い、下まで運ぶ手助けをすることにした。狭い階段を二人で呼吸を合わせ、降りて行った。

例によって、一人のスタッフが買ったばかりの新しいエアコン一式を持ってきた。

新しい製品の取付前に、まずは古い製品の取り外しをした。

古くなったエアコンをどうするかという相談を妻としていたときに、妻はそのスタッフに引き取ってくれる人はいないか、訊いてみた。すると、当の本人が引き取ってくれるとのこと。これは願ったり、叶ったりだ。早く処分したかったので、若干値引き交渉しただけの、ほとんど彼の言い値で了解し、引き取ってもらうことにした。

古くなったエアコンは10年以上も昔の代物だったため、室外機の重量は半端ではなかった。取付時も、新しいエアコンの取付自体は、本人がまったく一人で作業を完了したが、取り付け前の、古いエアコンの取り外し作業時には、室外機の重量に耐えきれず、さすがに私にちょっと手を貸してほしいと助けを求めた。おそらく40kgくらいかそれ以上あったと思う。

さて、取付作業も終わり、古いエアコンを引き取って、帰ってもらうだけになったとき、取り外し時にも私の手を借りなければ、下せなかった経緯があるだけに、誰か助けを呼んでいるのだろうと思っていた。だが、待てど、その誰かは現れる気配もない。グエンキムのスタッフのお兄ちゃんは、平然としている。

結局のところ、お兄ちゃんは一人で運んでいくつもりなのだ。

聞けば、取り外しの時は、手を伸ばさなければ届かない高いところから、下す作業だったので、助けが必要だったが、一旦床に下してしまえば、一人で運べるというのである。

下に降りて、どうするのか、と訊いたところ、駐輪場に停めてあったバイクを指差し、あそこに載せようと言う。

「おぬし、一人であの重いエアコン一式を持ってきて、帰りはさらに重い旧式のエアコンを一人でバイクに載せて持って帰ろうと言うのか」

私は、途中手助けはしたものの、なんとか一人で作業を完結させようとする彼の態度に恐れ入った。

K社の配送・取付スタッフが、本来の仕事のみならず、中古品の買取からその後処理まで全部一人で完結してしまうのは、事の是非はともかく感心してしまう。

ベトナムの会社は、どこも概して、中間管理層が脆弱で、その皺寄せや負担がラインスタッフに行ってしまう。ラインスタッフは、常に、そうした負担を背負いながら働くせいか、必然的にいろいろな意味で強くならざるを得ない。

言いたいこともはっきり言う。とりわけ、問題が起こった際には、管理職の責任というよりは、圧倒的にラインスタッフの責任が追及されてしまうので、その言い逃れも凄まじいものとなる。

それでも、単純に個々人の能力だけを見ていくと、概して非常に高いレベルにあるように思われる。

しかし、組織プレーとなると、これらを束ねて指揮する管理者が育っておらず、個々のラインスタッフの仕事をうまく統合することができないということは実に明白である。

このあたりがこの国の将来に向けてのビジネスの一つのポイントだろう。

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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