ベトナムビジネス体験記

第二十二回 カカア天下社会

 ベトナムをはじめて訪れた人たちは口々に言う。

「男の人が昼間からカフェでぼうっとして、仕事してないのはなぜ?」

  たしかに、昼間のカフェを覗くと、ボケッと坐っているいるだけの男や将棋に興じている男たちの姿を目にする。

  亭主の仕事といえば、女房を職場に送り迎えをするだけという図も珍しくない。南国の家庭は、間違いなく、働く女性たちによって支えられている。

  女性の社会進出が進んでいるというより、女性なしでは社会が成り立たない感じである。

  必然的に、会社でも女性の果たす役割は小さくない。

  実際、取引先を見回しても、女性の担当者の顔ばかりが頭に浮かぶ。

  我々の縫製業界は、そもそも女性が多い業種であるが、それゆえに、社長やマネージャーなどの要職にも女性がついていることは少なくない。日本から来られたお客さんの中には、はじめて訪問する企業の対応窓口担当として女性が登場すると、「(なんだ)女か」と蔑むような表情を見せる方もいらっしゃるが、侮ると後で思い知ることになる。

   かく云う私自身、最初は女性が担当者として紹介されると、ちょっと心配していたものだが、今では、まったく逆で、女性が対応してくれると安心で、男性の担当者が出てくるとむしろ不安を感じてしまう。大概にして女性のほうが物言いもはっきりしていて、決めたことは守ろうとする傾向が強い気がする。対して、男性の場合でしっかりした担当者というのは少なく感じる。

   縫製工場の場合、社長は男性の場合もあるが、キーとなるマネージャーの立場は女性のことが多い。そして、この女性のマネージャーがみな揃って百戦錬磨のつわものである。

   中部ダナンのH社のマネージャーAさんもそんな女性の一人だ。

   あるとき、顧客に頼まれて、H社での委託加工生産できないものかと同社を訪れたが、はじめはけんもほろろで相手にされなかった。だが、その後、以前に同社を訪問していた顧客に直接連絡をとってきたという。後の加工賃の交渉をうまく進めるために、わざと私からの申し出を鼻であしらいつつ、客先にはしっかりと連絡を取りに行ったのだった。

   このH社は社長のNさんもなかなかしっかりした女性で、一旦味方につけると頼もしい存在だった。

   同社の不手際で納期遅れが発生しそうになった際には、社長の面子にかけて、間に合わせると断言し、最終的に船便では間に合わず航空便を使う羽目になったのだが、同社でその費用を面倒見てくれた。

   女社長と言えば、V社のV社長もなかなかの切れ者だった。

   彼女の場合、情報収集力が並大抵でなく、取引相手の我々がどこで何をしているのか、知り尽くしていて、交渉以前に空恐ろしさを感じたものだ。

   取引についても、はじめは日本の技術を吸収のために我々からの申し出を受けてくれていたが、もう学びとるものはないと判断した時点で、高い値段を提示して、こちらから取引継続できないと言わしめてきた。

   ベトナムの歴史を紐解くと、古くは後漢の支配に抵抗して反乱を首謀したチュン姉妹(「ベトナムのジャンヌダルク」とも言われる)の例もあり、女といって見くびれない。

   また、ベトナムの言い回しでも「1番が女房で、2番がお天道様」という言葉があるくらいで、たしかに男性以上に尊重されているし、交渉事でも、最終的な決定権を持っているケースも多い。

   ベトナムの女性は侮れないことだけは、肝に銘じておいたほうがよい。

  また、ベトナムの言い回しでも「1番が女房で、2番がお天道様」という言葉があるくらいで、たしかに男性以上に尊重されているし、交渉事でも、最終的な決定権を持っているケースも多い。

   ベトナムの女性は侮れないことだけは、肝に銘じておいたほうがよい。

 

 

 

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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