ベトナムビジネス体験記

第十九回 旧暦と旧正月の話

旧正月が近づく季節になると、この国では幾許かでも旧暦を意識せざるを得ない。

 

旧暦は通常太陰暦とか陰暦と言われ、月の満ち欠けをもとに作られた暦と説明されるが、1年の単位では太陽の動きにも配慮がされ、故に、太陰太陽暦とも言われる。

太陰太陽暦では、19年に7度の閏月を差し挟んで、1年を13ケ月とし、年単位で季節が実際とずれを生じないように調節している。

1月下旬の早い元旦が来る年には、たいてい閏月があって、翌年の旧正月は遅い旧正月となる。

2012年の場合、新暦の1月23日が旧暦の1月1日にあたる。旧暦では通常の3月のあとに閏3月が来て、1年が13ケ月となり、2013年には旧正月の1月1日は新暦の2月10日に来る。

 

日本でもそうだが、ベトナムでも正月は縁起を担ぐ。

旧正月明けに仕事の面で不具合があると、その年1年が「ついてない年」となってしまう。だから、できるだけリスクを伴う仕事は旧正月が来る前に仕上げてしまい、正月明けには、比較的気楽に取り掛かれるように仕事を按排しようとする。

たとえば、我々の業界ではこの時期には展示会サンプルを手掛けることが多いのだが、急ぎのサンプルについては、旧正月前に仕上げて出荷してしまい、旧正月明けに残るのを嫌う。仕事を依頼する側もこれについては感覚的に理解できるのか、旧正月明け出荷になりそうな、急ぎのサンプルの依頼はまずない。

盲点なのは、資材の荷受けである。

もうかれこれ数年前になるが、同じく旧正月のある中国から旧正月直前に資材を発送したいというお客さんからの要望に、ある工場が大反対したことがあった。曰く、中国からの荷物はたいてい書類がいい加減で港が荷物が止まることが多々ある。正月明け早々、そんな不運に出会うと、来年1年がすべてダメになってしまうから、それだけはやめてくれと。

かくして、お客さんに一部を航空便で発送いただき、工場には納得してもらった。

 

旧正月明けの仕事始めについても、験を担ぐもので、ベトナムではなぜだか、偶数日が良いとされている。

2012年は新暦の1月27日までが国の祝日制度での正月休みで、1月28日(土)が旧暦の正月6日、1月30日(月)が正月8日、2月1日(水)が正月10日となっているので、1月30日か、あるいは、弊社のように2月1日に仕事始めをされるケースが多いと思われる。

 

なお、この旧正月が国を挙げての休みとなるのはインドシナ半島ではベトナムを除けば、中華系住民の多いシンガポールとマレーシアだけだが、カンボジアやタイでも都市部には多くの中華系やベトナム系の住民が住んでいるため、彼らが休みを取ると町中はひっそりとする。たとえば、プノンペンでは旧正月が来ると、町なかの半分くらいのシャッターが下りていて、外では賭け事に興じる姿が見られ、華僑やベト僑が旧正月の休みを楽しんでいるのがよくわかる。

ちなみに、各国の旧暦はほとんど同じなのだが、標準時が異なるため、ときに国ごとに1日ずれることがある。

たとえば2007年にはベトナムでは2月17日を旧暦の1月1日としたが、中国では1日遅い2月18日を旧暦の元旦とした。こうしたずれは数年に一度起こるがほとんどの場合旧暦の翌月1日には解消されるので、旧正月のずれを引き起こす1月以外では大きな混乱を引き起こすことはないとされる。

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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