ベトナムビジネス体験記

第十一回 ビジネス上の日本の位置付け

ベトナムにおいて、我々の営む繊維製品の生産・輸出は、国の外貨獲得手段のうちで原油の輸出に次ぐ重要な産業である。
この位置づけはこの十数年来変わっていない。

では、この業界の中で日本市場の位置づけは、果たしてどのようなものか?
過去5年間で見ると、ベトナムから輸出されるすべての製品の仕向地の中で日本向けは10%前後を占めるに過ぎない。一方、他の市場ではアメリカ向けが55-65%、ヨーロッパ向けが25-35%程度である。
2002年のアメリカ向け解禁以降、同国向けが圧倒的となり、それ以後、日本勢はこの生産市場で苦戦を強いられているのが実情だ。

生産工場に言わせると、アメリカ向けと日本向けの商売の違いで一番大きいのが発注の生産ロットで、同種の商品でも、発注数量は0が1つ違うくらいならかわいいもので、0が2つ違うケースも稀ではない。こうなるとベトナムに限らず、日本向けよりアメリカ向けに目が行ってしまうのは致し方ないところか。
加えて、要求される製品の品質基準が、日本向けに比べてずいぶんやさしいとなれば、これまた、アメリカ向けに向いてしまうのはやむを得ないと言えるだろう。
価格面では、日本向けのほうが総じて若干高いようだが、上記の点を加味して言えば、その差額はさしたるものではないようである。あるいは、昨今の低価格志向で、むしろ低くなることすらある。
日本の価格破壊現象は、生産の現場にも当然大きな影響を与える。たとえば、日本でも小売価格で700円だの800円だののジーンズが出回ったが、一方で、HCMCで250,000ドン(約1,000円)のジーンズはごく一般的で高級品とは言えない。一般に高価格とされる輸出向け商品で、ベトナムの国内消費分を価格で下回っていれば、工賃のような、そこにかけられるコストの傾向もおのずと想像がつく。

それでも、日本の客にもいい面はある。概ねにして、生産工場側が言うのは:1.支払がいい。2.一度関係を築くと長年安定した関係を続けてくれる。3.技術指導等含め、生産管理面のフォローがしっかりしている。といったところだ。

ただ、実際、日本市場向けの対応ができる生産工場というのは、極めて限られていて、日系企業か一部の韓国・台湾資本の工場が中心で、現地資本だと長年経験を積んできた工場、あるいは、日本人の技術者が駐在している工場のみとなってしまう。
そして、それゆえに日本市場向けに対応ができる工場には日本のお客さんがどっと押し寄せ、最終的にはほとんど日本向けのみというような状態になってしまう。
HCMC近郊の外資工場以外の現地資本工場では、AP社やBM社がその典型である。以前はLA社なども日本向け一辺倒だったが、今では工場を縮小してしまった。

昨今よく言われる、日本のガラパゴス化はこの業界でも確実に当てはまっている。日本市場向けに対応できる生産工場というのは、世界的なスタンダードからすると、まったく別次元で存在していて、この国の中でもごく少数の工場のみがそれに該当する。
日本の企業はある程度の規模のある日本市場のみを見てきた結果、行き着いた先がこの状況である。最近ではF社のように世界市場と立ち向かおうとする動きも出てきたが、これなどは例外中の例外だ。
その点、自国の市場が限られていた韓国企業は当初から海外市場に注目して、積極的に世界に出ていき、世界標準の物作りを展開していった。この国でも、欧米向の商品は韓国勢が一手に引き受けている感がある。

商品の品質基準のみならず、生産性向上を含めたあらゆる面での技術でも、日本の生産技術には世界中が一目置いている。我々日本人が築き上げてきた、そうした貴重な資産をもっと積極的に世界の中で活用していくことが、日本のみならず世界の発展に寄与することになるのではないだろうか?

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

vietnam business access

このページのトップへ戻る