ベトナムビジネス体験記

第八回 テト攻勢

ベトナム戦争中の1968年1月末、北部軍は南ベトナム全土を対象に大攻勢を打って出た。
旧正月の期間は暗黙のうちに休戦とする慣例の裏をかいたため、完全に南部軍の油断を突き、北部軍は南部の拠点を次々に占拠していった。
世に言うテト攻勢である。

このテト攻勢はビジネスの世界でもありうる。

10年以上前の商社勤務時代のこと。
勤めていた会社のインドネシア支店駐在だったKマネージャーは旧正月明けに当地を訪問し、インドネシア生地の販売攻勢をかけた。
年初の訪問者は1年の吉凶を占う御神籤のような存在である。然るに、こうした客とは、何でもいいからとにかく「話」を作りたがる。
こうした習慣を知った上でのMマネージャーの作戦だった。実際、作戦は功を奏して、一定の成果を挙げた。

ただし、これも留意したい点がある。
当時私が勤めていたM社は日本でも有数の大手商社で名前が通っており、相手の会社にしても、新年の最初の客として、喜ばれこそすれ、嫌がられることはなかった。知名度を盾にKマネージャーは繊維公団のTOPとの面談から始まって、北に南に大手国営企業を一通り巡った。
だが、これが無名の会社だと、こうは行かないかもしれない。新年最初の客については相手も選んでくる。自分の身丈に合った相手を選ばないと、アポ自体受けてくれない恐れがあることは心していたほうが良い。

もう一つは、正月なので、当然酒の席にで、乾杯の攻勢もくることも想定していたほうがよい。乾杯要員を擁して戦場に向かう必要ありだろう。

商売上のこうした縁起担ぎは、個人の取引の場合にも当てはまる。
1日のうちでも、商売人は最初に店に入ってくる客を重要視する。その客が買ってくれると、その日は吉であり、売れないと1日中、凶となる。
とくに、家具など高価な買い物するときは、この習慣を「悪用」できる。前日に店を回り、相場観を掴んでおく。翌朝、狙いをつけた店に行き、値引き交渉する。
その日の最初の客だと、どうしても店の人間は、交渉の脇が甘くなるところを狙うのだ。

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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