ベトナムビジネス体験記

第五回 職場でのベトナム人女性

ベトナムでは職場でも女性の活躍がめざましい。
弊社に限らず、女性を多く採用している職場は少なくないと思う。

繊維産業の中に身をおき、とりわけ縫製工場を中心に歩き回っているため、社会全般の平均より女性の比率が高いのかもしれないが、行くところ、行くところで女性が中心となって働いている。
工場訪問をしはじめていたころは、はじめての訪問時に女性が出てくると、大丈夫かなと不安になったものだが、最近ではまったく驚かなくなった。実際、細かな縫製の仕事は女性向きなのか、この国での経験上、総じて女性のほうがしっかりした対応をしてくれるように思う。肝っ玉母さんのような女性が部下の若い男性を使っている姿は、この国ではけして珍しくない。今ではむしろ、会社のトップや営業窓口の番頭さん役が女性だと安心し、逆に男性が出てくるとドキッとする。

結婚し、子供を産んでも、また職場に復帰する例は、日本から見ると少し違和感を持つかもしれないが、当地においては極めて自然である。

弊社にHという事務職のスタッフがいる。はじめは単なる事務仕事をさせていただけだが、仕事の覚えがよく、責任感が強いため、今では、職場の中心選手に育っている。
彼女が2年前に結婚し、子供ができ、産休に入るときのこと。
もうそろそろ休みに入るという、ある週末に彼女のほうから「できれば来週の水曜日ぐらいから休みに入りたいのですが」と打診があった。実は、その前から来客の予定が翌週に入っていて忙しくなりそうなことを彼女にも伝えていたので、おそるおそる私は「他の日はいいけど、来週の金曜日だけはなんとか出てもらいたいのだけど、どうかな?」と尋ねると、彼女は嫌な顔をするでもなく、わかりましたと快諾した。
その金曜日の終業時間間際に客のアテンドを終え、事務所に戻り、感謝の意を伝えると、彼女は「明日から産休に入りますね。宜しくお願いします」と言って帰っていった。
彼女が休みに入ってしばらくして、携帯電話に彼女からメッセージが入った。
「○月○日、子供が生まれました。男の子で3kgです。母子ともに健康です」
無事でよかったと一安心した。
それから、1週間ほどして何気に携帯電話に残っていた彼女のメッセージを読み返したとき、ぎょっとした。子供の生まれた日付が彼女がにこやかに事務所を後にした翌日の土曜日だったのに初めて気づいたのである。
確かに工場でも産まれる直前まで働いている女性の姿を見かけることはあったのだが、まさか自分の身の回りにこんな事例が発生するとは思いも寄らなかった。

経理を任しているTさんは私と同い年で、今ではもう40代半ばになる。
5年前に働き始めて、ちょうど1年ほど経ったある日のこと。
「あのう、ちょっと話があるんだけど」ともじもじしている。
「どうした?」
「笑わないでよ。実は、子供ができちゃったんで、早めに言っとこうと思って、、、そんなつもりじゃなかったんだけど、、、」
彼女にはすでに男の子がいて、しかも、その長男は大学受験の直前だっただけに、まったく想定外の展開に唖然として二の句が接げなかった。
「おめでとう」の言葉は出てこないし、「何やってるの」でもないだろうし、1人しかいない肝心の経理がしばらくしたら産休に入るかと思うと、ただひたすら頭を抱えるしかなかった。

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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