ベトナムビジネス体験記

第十八回 贈答文化

ベトナムも日本と同じ中国の周辺国で、昔から中国に朝貢していたからだろうか、贈物は人々の生活に根付く、一種の伝統文化となっているようである。

 

旧正月前は一年で一番贈物がやりとりされる時期であるが、それを除けば、以前は3月8日の国際婦人デーや11月20日の先生の日に花屋が繁盛するくらいだった。だが、最近はやれクリスマスだ、やれバレンタインだと理由をつけて、プレゼントを贈る。毎年9月には、中秋の「月餅」合戦まで行われる。

 

知り合いのさるベトナム人は、会社では事あるごとに上司に付け届けをするのが出世の常道なのだとのたまう。

新暦の正月に旧正月、共産党の創立記念日の後には女性の日、南北統一の4月30日、メーデー5月1日……と贈物をする理由には事欠かない。上司本人への贈物もさることながら、奥方への気遣いがとりわけ重要なことを強調する。

これをもって、東アジアの伝統と言うべきか?

 

他人事のように言っているが、私にも似たような贈物の経験がある。

今から10年以上前の2000年7月にベトナム初の株式市場がHCMCで開いたばかりのころのことである。

口座を開いたS証券の担当者に妻が何かプレゼントしようと言い出した。あれこれ考えた挙句、出した答えは携帯電話。いろいろとお話を聞かせてもらうための必需品として、とのこと。当時、携帯電話はまだそれほど普及しておらず、誰もが持っている時代ではなかった。当然、値は張る。「だから、いいんじゃないの」と彼女はにんまり。 

果たして、担当のNさんに渡してきたのだが、彼はすでに3つも携帯電話を持っていたのだった。誰しも考えることは同じなのだ。

 

この贈答文化、南部より北部のほうが断然伝統を大切にしている。

北部の会社を訪問するとと帰り際に贈物を渡されることが多い。

N社のL社長とは4年来のつきあいだが、帰り際にはたいてい贈物の袋を渡され、それが決まっていつも大きい。コーヒー、お茶、お菓子の詰め合わせ……とこれでもかというボリュームである。

ハイフォンに初めて行ったときには、工場でお昼に御当地麺で有名なバインダークアを食べてみたいと言ったのだが、そのときには偉く大層なレストランに招待され、帰り際にバインダーの乾麺をどっさりといただいた。荷物が重くなるのが厭で、スタッフが同行しているときには、スタッフにあげたりしているのだが、このときは誰もいなくて、結局、HCMCの自宅まで大袋を持ち帰り、知り合いにお裾分けということになった。

この大きな贈物のことは、以前、日本の大使が現地の新聞に寄稿していたのを読んだ記憶があるから、ベトナムでは贈物というものはかくあるべきものなのだろう。

 

ハノイの町中を見渡すと、ギフトショップがやたら多いような気がしていたが、これはきっと気のせいではなく、十分な需要があるのだろう。

秋利美記雄

プロフィール:1966年生れ。山口県下関市出身。1995年よりベトナム在住、大手商社勤務を経て、独立、アパレル専門商社及びコンサルティング会社を設立。 Qara Qoromo LLC.社長、My Lang Consultant Co., Ltd.取締役。 ベトナム語他語学に精通、現地企業との交渉は自ら行う。ベトナム在住歴16年。 アパレル情報ウェブサイト"Apparel Resource in Indochina"(www.apparelresource.asia/)を主催。

連絡先Eメール:info@apparelresource.asia

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