インドシナニュース

カンボジア:賃金引き上げによって引き裂かれる繊維産業(前)

繊維産業における最低賃金の引き上げや、カンボジアの将来が危ぶまれる近年の政治的混乱は、実入りのいいカンボジアの繊維部門で運営している各国の企業から様々な反応を受けている。賃金の引き上げに対しては、カンボジアで調達している最大手のアパレル企業各社からは広く賛同の声が上がっているものの、中小規模の企業からは採算性の低下が見込まれていることが嘆かれているほか、政治的な緊張状態が増すのではとすべての企業が懸念している。

先月、2018年には153米ドルから170米ドルに引き上げられる最低賃金の値上げ案が通過し、繊維労働者の最低賃金は対前年比11%増加することが決定した。しかしながら、アパレル企業大手のほとんどは賃金上昇に伴う間接費用損失の可能性に対しては問題に感じていないように思われる。

繊維労働者を支持するためにもH&Mは最低賃金の引き上げを支持しており、新しい法案を歓迎するとスウェーデン企業H&Mの広報担当であるUlrika Isaksson氏は述べた。

「当社は最低賃金の引き上げには前向きで、カンボジア繊維産業が定期的かつ透明な最低賃金制定の過程を設けることを歓迎します。」とeメール文中で回答している。

イギリス小売業大手Debenhamsの広報マネージャーであるRebecca Maund氏も同様の回答を寄せている。

Debenhamsはグローバルブランドや小売業者、労働組合と数多く協力し、カンボジアの労働者が生活賃金を達成するよう支援しています。」

このように、潤沢な資金を持つ巨大企業が前向きな反応を寄せている一方で、世界的な風当たりの少ない中小企業では今後の採算性に対する後ろ向きな反応が目立っている。

フランスに拠点を置く繊維企業We Group LtdCEOであるEric Taverniers氏は、最低賃金の引き上げによりカンボジア国内の運営を再考せざるを得なくなっていることを明かした。

カンボジアの施設と比較して中国にある同社の工場が3倍効率的であることや、ベトナムにある同社の工場がミスが少なく輸送・市場の柔軟性が高いことを説明し、新しい賃金法は、すでに競争の激しい産業においてカンボジアの競争力を弱めると同氏は述べた。

「競争が激しいため、店頭価格を引き上げることはできません。今や、カンボジアに工場を設置することは(近隣諸国に設置する場合と比較して)安いというわけではありません。ミャンマーやバングラデシュに行けばいいわけです。」

Taverniers氏はカンボジア国内にある工場を直ちに閉鎖することを計画しているわけではないが、国民選挙が近づくにつれ高まる政治的緊張がさらに高まれば、撤退もありうるという。

「街中での銃発や暴動など、次の6ヶ月間が心配です。カンボジア国内の政治ニュースを読んだ時最初はとても怖いと感じていたのですが、今やただ閉鎖しようと考えています。(工場が運営をやめてしまうのは)カンボジアにとっての罰則であり、まだ確定というわけではありませんが検討はしています。」

(後編につづく)



カンボジア ジャンル:
最終更新:2017年11月08日

このページのトップへ戻る